恩田陸「祝祭と予感」

「蜜蜂と遠雷」の短編ということで読んだ本。
結構短い短編6話で、すごく軽いのでさらっと1時間くらいで読める内容だった。

以下、各話の簡単なあらすじ。

祝祭と掃苔

亜夜とマサルが子供の頃に習っていた綿貫先生のお墓にお参りに行くところを、なぜか風間塵もついてきて…というお話。
風間塵の家族の話がちらっと出てきたり(皆ばらばらに暮らしていて、皆すごい、みたいな)、コンクール後の話があったりと、本当に雑談が繰り広げられていて、「蜜蜂と遠雷」のポストクレジットシーンみたいな感じ。

獅子と芍薬

「蜜蜂と遠雷」では審査員だったナサニエルと三枝子が出会った時のお話。
二人はコンクールで同率二位で、一位を勝ち取れなかったという因縁の出会いであった。
二人とも、このコンクールで優勝すればホフマン先生に弟子にしてもらえるという約束していたのに、と悔しい思いをする。
ちなみにナサニエルは、そのまま粘ってホフマン先生の名前を出さないという約束で教わることになる。

袈裟と鞦韆

「蜜蜂と遠雷」のコンクールで新作としての課題であった「春と修羅」ができた裏話。
短いながら泣ける話だった。

作曲した菱沼に小山内という生徒がいた。といっても、小山内は別の教授についていたので弟子ではなかったけれども、少し変わったバックグラウンドを持った印象的な生徒だった。
卒業後、実家のホップ農家で手伝いをしながら作曲します、と帰っていく。
毎年、菱沼に届く年賀状には、作曲した曲名が書かれていたり、書かれていなかったり。
落ち込んで、また浮上した今年の年賀状だったのに、小山内の訃報が入る。44歳の若さであった。
彼の郷里に向かうなか、小山内が楽譜みたいという「春と修羅」を読む。
お葬式から帰ってくると、コンクール課題曲の依頼を受けるのだった。

竪琴と葦笛

ナサニエルとマサルが師弟関係になった経緯の話。
マサルはジュリアード音楽院のプレカレッジで、ナサニエルではなくミハルコフスキーのもとについた。ナサニエルは、ミハルコフスキーが弟子にとるんだろうなと思いつつ、彼の難ありの性格でつぶれないか少々心配していたが、実はマサルはとてもしたたかで、ナサニエルに師事したいという想いで、一計を講じるのだった。

鈴蘭と階段

亜夜のよき理解者である奏の話。
奏はヴィオラに転向したものの、まだ自分の楽器を持っておらず探していた。
そこに亜夜から電話がかかってきて、風間塵とチェコ・フィルハーモニーのヴィオラ奏者パヴェル氏の家にいるが、パヴェル氏の予備のヴィオラがまさに奏にぴったり、パヴェル氏も売ってあげると言っている、というのだった。

自分の楽器ってやっぱりあるんだーというのと、奏者間で売買ってあるんだーという驚きだった。

伝説と予感

ホフマン先生が風間塵に初めて会う時の話。
たまたま、さる方の邸で出会った二人。ホフマン先生は先代がコレクションしていた楽譜を見に、風間塵は父親が蜂の研究するのに邸の庭で調査していたのに連れられて、だった。
そこで、塵が調律していないピアノで、前日にホフマン先生が別のピアノで弾いた曲を完璧にコピーしていたのだった。

風間塵があまりにすごい設定すぎて、ちょっと現実味がないなー感がぬぐえない。
亜夜と仲良しで無邪気な感じが、今回はちょっとだけ見られたので、そういうキャラクターがもっとしっかり出ていたら、もう少し面白かったのでは?と思ってしまう。

何はともあれ、本書はボーナストラックみたいな本で深い感想はないけれども、「蜜蜂と遠雷」ファンにはおいしい本だったのではないかなと思った。


恩田陸「祝祭と予感」2019年 幻冬舎

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