納得いく終わり方でとりあえず良かった:貴志祐介 「悪の教典 下」


苦手と思っていたくせに、下巻は一気読みしてしまった。
いやぁ~圧巻だった。
結末は納得のいく終わり方だったからいいけれど、これで救いようがないエンディングだったら立ち直れないだろうな、という感じ。
なんとなく「バトル・ロワイヤル」を彷彿とさせる物語となっていた。

さて蓮実の暴走は止まらない。
それと同時に蓮実の過去もちょいちょい出てくる。

なんでハーバードを卒業し、アメリカの証券会社にまで勤めていたのに、日本で英語の教師をやっているのか?
これは蓮見の異常な性質を見抜いた会社のトップが、蓮実にアメリカを出て二度と帰ってこないように言ったからだった。しかも政府にも圧力をかけて、蓮実をテロリスト扱いにしてアメリカに入国できないようにまでしていたのだった。
そうなると、いくら英語堪能でばりばりの経歴があっても、仕事が限られてくる。アメリカに行けないようでは世界を股にかけたような仕事が出来ないというわけだ。
そんな折に、たまたま非常勤講師として学校の先生をした時に、その支配するという立場に自分の場所を見出したというわけだった。

そんな蓮見に戦いを挑んだのが圭介。
盗聴器を仕掛けているということに確信を持っていた圭介は、夜の学校で探索しようとするのだが、あっさり蓮見に見つかって殺されてしまう。

一方、蓮実は自分のペットとなっていた美彌のことが邪魔になってくる。
自殺と見せかけて殺す舞台としたのが、文化祭のために居残り・学校でのお泊りが許された日だった。

そこから時間刻みの話の展開となっていく。
美彌の殺害現場を見られてしまった蓮実はその子も殺してしまう。
しかもその子のせいで自分のアリバイがなくなってしまった。
とっさの殺しだった為に、色々と工作が出来ていない。
そこでとった計画というのが、男子生徒とできていることで強請りをかけていた美術教師(男)を呼び出し、捕獲・縛り付ける。

そいつに罪を着せて、生徒全員(といっても残っているのは自分の受け持っているクラスのみ)を殺すことにする。凶器は銃。
まずバンドの練習をしに離れていた生徒を殺す。
そこで「怪しい人物が校舎に入って銃を乱射している。危ないから屋上に上ってドアを閉めて避難しろ」と放送を流す。
蓮実の親衛隊たちはすぐに従おうとするが、この放送自体に疑問を持つ生徒が出る。

まぁそんなこんなで皆が次々殺されていく。
嬉しい事に怜花と雄一郎は死なない。二人の機智でなんとか乗り切るのだった。
警察がやってきて蓮実を捕獲するにも、警察はあっさり蓮実の言うことを信じる。
怜花と雄一郎が出てきて証言しても、何にも証拠がないので犯人と断定できない。

えええぇ!?目撃者情報だけじゃダメなわけ!?と、これで終わってしまうかと心配だったが、そんなことはなかった。
死んでしまった級友を助けようと、AEDを使っていた生徒がいたのだ。そこに蓮実が登場。中にいる生徒に話しかけ、中に入れてもらったところで銃撃、というシーンがあったのだが、AEDの録音機能によってばっちり収録されていたのだ!

やれやれ…と思ったところで、蓮実は「これは、全部、神の意志だったんだ。頭の中に響いてきた命令で、やったことなんだよ。四組の生徒は、一人残らず悪魔に取り憑かれていた。これは、みんなの魂を救うためだったんだ」(p400)と言う。つまり頭の回転の速い蓮実は、すぐさま次のステップへと進んだというわけだ。
ま、このくらい蓮実はやりそうだし、とりあえず捕まったので、私としてはやれやれ…という感じだった。

むしろ従順に捕まるようだったら、この物語の蓮実像が崩れるので物語としては妥当でしょう。
読み応えのある話だったけれども、物語の性質上、再読したい本ではないなと思った。


貴志祐介 「悪の教典 下」 2010年 文藝春秋

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