ローズマリ・サトクリフ『第九軍団のワシ』

その昔、本のブログに日参していることがあり、そこで絶賛されていたのがローズマリ・サトクリフの本。
あれからXX年…やっと読んでみた。

結果。いやー--面白かった!もっと早く読めばよかった。
児童書の分類だけれども、侮るなかれ。わりと歴史を知らないとついていけない気がした。特にローマ軍団の階級とかがちょっと分かりにくかった。

でもだからといってお堅い歴史物語なのではなくて、冒険もあり、友情物語でもあり、エンターテインメント的に面白い。

冒険のなかで、ローマ人ではない土着のブリトン人が出てきて、仲良くなる場合もあれば敵として戦う場合もある。
種族が違う人が出てきて交流があるという図は、ファンタジーみたいで(エルフと人間みたいな)、そこが物語を面白くしているのだけれども、
一方で、実際は昔現実にあったであろう征服者と被征服者の話でもあると思うと、ファンタジーではなかなか味わえない重さみたいのも感じる。たぶん、ファンタジーのように異世界という意識がなくなるからなのだろう。

以下、簡単なあらすじを。


ローマ軍団の百人隊長のマーカスは、赴任先のブリトン島にやってきた。

マーカスの父親も軍人で、第九軍団に所属していた。しかし、マーカスが小さい頃、この第九軍団は反乱を平定するために北へ向かった後、こつぜんと姿を消してしまった。その時にローマ軍団の象徴である《ワシ》も消えてしまって、名誉が失墜してしまった。
マーカスはこの事件の真相が少しでも分からないかという期待ももって、ブリトン島にやってきたのだった。

ところがある時、ブリトン人の反乱にあい、無事反乱をおさめることはできたものの、マーカスは怪我をしてしまい足が動かなくなってしまう。
軍にいられなくなったマーカスは、身の振り方を決めるまで、ということで、父方の叔父で、退役した後もブリトンに住みとどまっているアクイラ叔父の元に身を寄せることにする。

叔父と一緒に見に行った剣闘士の試合で負けた剣闘士のことが気になり、奴隷として買う。
エスカというその奴隷は、マーカス一人の従者として、足の悪いマーカスの世話をする。その内マーカスは、エスカを奴隷というより友人のように扱うようになる。

もう一人、出会いがあって、それは隣に住むローマかぶれのブリトン人家の娘、コティアであった。
コティアはブリトン人であることも誇りに思っていて、ちょっとはねっかえりではあるけれども、マーカスと良い話し相手となった。

そして叔父のはからいで良い外科医に出会い、手術(!)することで、ある程度歩けるようになったマーカス。
今後どうしようかと考えている時に、叔父の元に、叔父の旧友である司令官が訪ねてくる。

その食事会の際、その司令官が気になることを言う。北の方で、《ワシ》がどこかの氏族の神殿で神のように祀られているという噂があるというのだ。
それを確かめようにも、確かめて本当だったところで、失われた名誉は回復することはできないと言われたマーカスは、軍人でもない自分が行って取ってくるのはどうか?と提案する。

噂のある北方は、ローマの及ばないところ。つまり一人で敵地に行くことになってしまう。
司令官は止めるが、マーカスにはアイディアがあった。
というのは、足の手術をしてくれた外科医に、眼医者は薬を売りながらあちこち旅をしているという情報をもらっていたのだ。マーカスは眼医者になりすまして旅をすれば、誰にも不審がられないと主張する。
それに司令官もうなずき、マーカスは《ワシ》を探しに旅に出ることになる。

旅の前にエスカを奴隷から解放し、これからは友人としてついてきて欲しいと願う。
もちろんエスカは快諾し、喜んで一緒に旅に出たのだった。

眼医者の手ほどきを受けたマーカスは、エスカとついにローマ人がいない北にたどり着く。
そこである氏族の族長の子供の眼を治したことで、その氏族に受け入れられたマーカスとエスカ。
「槍つかいの祭」に招待される。

そこでなんと、《ワシ》を見つけるのだった。
その時に、自分の父親が最後まで戦った後殺されたことも知る。

マーカスとエスカは綿密に計画を汲み、祭壇にある《ワシ》を盗みだし、何食わぬ顔をして氏族に暇を告げる。
途中で《ワシ》がなくなったことに気付いた氏族が追いかけてくるが、《ワシ》は隠しておいたので手元にはない。誤解を詫びて去って行く氏族を見送り、計画していた通り、エスカが具合悪いふりをして別の集落に寄る。
病気=悪霊がいる、と思わせ、集落のはずれに留まらせてもらって、その間にエスカは《ワシ》を取りに戻ったのだ。

めでたく《ワシ》を取り戻して喜んだ二人は、旅を続けるのだが、エスカがブローチをなくしたことに気付く。
おそらく《ワシ》を取り戻した時に落としたと思われるので、二人は必死で逃げる。

そうこうしている内に追手が間近まで近づいてくる。

最後は族長の弟に追いつめられるが、エスカの健闘により追手を縛り上げる。
そして弟と話をして、《ワシ》は盗んだのではなくて取り戻しに来たのだと伝えるのだった。
そうすると弟は「やっぱりな…」と言い、彼の祖父が、マーカスと《ワシ》を持って最後まで戦っていた隊長の顔がよく似ているので親子だと気付いていたと伝える。そして祖父から《ワシ》を取り戻し、マーカスに父親の指輪を返すようにと言付かっていたことを言うのだった。

マーカスは《ワシ》と指輪を持って、エスカと逃げ、ローマ人が守る塁壁までたどり着くのだった。

大冒険を成し遂げたマーカスは、ブリトン島に留まることを決意し、《ワシ》を取り戻した功績として、ブリトン島での土地を願い出ることにする。
そこにエスカとコティアと一緒に住むことを計画するのだった。

という、ハッピーエンドで終わって気持ちよく読了できた。

マーカスが、エスカだけではなくブリトン人も尊重する人柄なのが良かったし、足を負傷して思うように動けないなか、人の助けも借りながら、そして自分にもどかしさも感じながらも進んでいくという物語もとても良かった。

ブリトン人の祭りの描写も興味深かった。
それが「土着の」という蔑んだ書き方でないのも非常に好感が持てたポイントでもある。

割と濃厚な冒険なので、ともすれば長い話になりそうなところを、割と淡々とあっさりと終わるのも、あまり感傷的にならなくてそれはそれでよかったなと思った。
長ければそれはそれで面白かったのかもしれないけれど、これも一つの形かなということで。

三部作+もう1作ということで、続きも是非読みたい!


ローズマリ・サトクリフ『第九軍団のワシ』猪熊葉子訳、2007年、岩波書店

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