「ポンペイ展」@京都市京セラ美術館

行った日:2022/06/18
★★★★☆
本日のBest:《劇の準備》

全体的な感想

ローマ時代に興味があり、いつか本当にポンペイに行ってみたい者としては、大々的なポンペイ展に行きたいもの。
ということで、行ってきた。

嬉しいことに全部写真OK。

自分では珍しいことにイヤホンガイドも借りた。
声優さんが2人も起用されていてどういうこと??と思ったら、物語仕立てになっていて、以前、ポンペイにやってきた時に案内してもらったポンペイ住人の安否を確かめにやってくる、というところからストーリーが始まる。
幸運にもその人は無事で、そこから過去にさかのぼり、ポンペイを初めて訪れた時に案内してもらったシーンとなるという感じ。

ちょっとまどろっかしい感じがしないでもないけれども没入感があって、これはこれでありかなと楽しめた。

特に印象的だったのはモザイク。
一片が非常に細かく、そのため複雑な混色が可能となっていて、とても見ごたえがある。
例えば魚もこんな感じ↓

《イセエビとタコの戦い》部分

その他にも医療器具があったり(技術の高さがうかがえたが使っては欲しくない)、生活用品があったり、邸宅の再現などもあって、その時代の生活の一端がうかがえてとても興味深かった。
例えばオスキルム。普通に飾ってあればただの円盤のものだけれども、飾られた当時を再現されると…

こんな感じで、列柱廊の柱の間に吊るされて飾られていたという。
イヤホンガイドでも「風で揺れている~」みたいなことを言っていて、そういう動きのある飾りだったんだ!という驚きでもあった・

何はともあれ、とても満足度の高い展覧会だった。

興味深かったもの

《バックス(ディオニュソス)と
ヴェスヴィオ山》62~79年, フレスコ

左にいる人物像、バックス、日本でよく知られた名前でいうとバッカスらしく、こんな姿のものは見たことなかったので、なにこれーってなった。
よく見たら全身につけているのが葡萄!

ポンペイあたりは葡萄の名産地だったらしい。


《ウェヌス》50~79年, フレスコ

顔が大きすぎない?とか腕短くない?とか少しプロポーションとして好みでないところはありつつも、
手の繊細なポーズや、腰にいたるまでのきれいな曲線、足の曲がった形など、美しさを感じた。


《劇の準備》1世紀, モザイク

本日のBestにして作品。

サイズとしてはなかなか小さいものだったのだけれども、細かいモザイクで、ものすごい詳細に描かれている。
しかも描かれているものもなかなか面白い。

右の後ろの方にいる人は、着ぐるみみたいのを着ていたみたいで、脱がせてもらっているのか着せてもらっているのか分からないけれども、ばんざいしているのが可愛い。
左寄りの人で二本の笛みたいなものを吹いている人の左隣では、それに合わせて踊りの練習をしているのか、真ん中の老人がそれを見てアドバイスしているのか…

色々と想像ができて、見ていて飽きない作品。
家に飾りたいくらい楽しい気持ちになる作品でもあった。


《黒曜石の杯》前1世紀, 黒曜石、サンゴ、ラピスラズリ、孔雀石、
金(象嵌)

アレクサンドリアの職人に作らせてもので、礼拝するエジプトの人物などを描いている。
使われている石たちの豪華さや、美しさも目を見張るものだけれども、ローマのインターナショナル性にも興味をそそられた。
エキゾチックな杯だこと…とかって思ってたのかしら


《マトローナ(既婚女性)》1世紀, モザイク

こちらも、細かいモザイクで、いかに微妙な混色を行っていたかという良い例かと思う。
手間がかかるのはもちろんのこと、根気もすごいな…と思ってしまう。
繊細な描写がお見事としか言いようがない。


《ブッラ(お守り入れ)》前1~後1世紀, 金(鋳造)

男の子が生まれるとこういったお守り入れが作られ、それを成人するまで持っていたらしい。
貴族だとこうやって金で作られることもあったそうな。
金ってところにびっくりだけれど、形としては可愛い~


《猛犬注意》1世紀, モザイク

家の玄関口に飾って、番犬がいることを注意を促す絵らしい。
実際にいなくても、泥棒避けに飾られることもあったとか。
セコムのシールを貼っとくってやつか。昔も今も発想変わらないな~と思った

普通に可愛いモザイクだけれども、用途が用途なので割と粒は大きいモザイク。
それだけにイラストっぽさが出るというか、それだけに可愛さが出るというか。


《踊るファウヌス》前2世紀, ブロンズ

動きに躍動感があって、ひときわ目を引く作品だった。
右足を大きく出しながら、上半身は左肩が前に出るくらいひねっている。更に顔は左上、おそらく指先を見ている…といった感じで、何度もひねりをきかせている感じ。

実際の人間でもバランスを取るのが難しそうなポーズを、ブロンズで実現しているのがすごいな~と思った。


《ヘビ形ブレスレット》前1~後1世紀, 金(鋳造、打ち出し、陰刻)

蛇がリアルで個人的にはあまりはめたくないブレスレットではあるけれども、かっこよさはある。
現代でもつけていたらかっこいいかも。
こういう動植物をシンプルにデザインしたものは、かえって普遍的なものなのかなーと思ったり。


《葉綱と悲劇の仮面》前2世紀末, モザイク

こちら、結構大きな作品で、しかも細かいモザイクでもあるのでめちゃくちゃ迫力があった!
輪っかのものが反復しながら、その間を葉っぱや柘榴、葡萄といった植物や果物が爆発するように描かれ、さらには1対の悲劇の仮面が置かれている…こういったすべての要素が迫力に繋がっているようだった。
悲劇の仮面の髪の毛がちりちりしているのも、更に動きを加算させてて良い。

なんとなくタイトルとして《秋の収穫祭》とかつけたくなるくらいの、「収穫だ!わーい!」という喜びと、それでいて秋のもの悲しさも忘れるなよとばかりの悲劇の仮面、という対比が面白い。
いや、収穫物なのかは分かりませんけどね。

本日のBestかとちょっと迷った作品。それくらいの迫力だった。


《ネコとカモ》前1世紀, モザイク

これまたネコの描写がすごい!
表情もかわいいし、動きもリアルな感じ。
カモも顔がかわいい‥

その下の鳥や貝類、魚のごちゃごちゃっとした感じが、パターンみたいになっていて、そちらも面白いなと思った。


《イセエビとタコの戦い》前2世紀末, モザイク

上でも書いた通り、魚などの描写が迫真にせまっていて、すごい!の一言。
周りの花をあしらった模様もとても細かくて、”モザイクですごい!”というのは別にして、意匠としても完全に好み。


《ブリセイスの引き渡し》50~79年, フレスコ

人物の重なりによって遠近を出しているのが秀逸だと思った作品。
一番手前は背中を向けている人物、その次にアキレウスとブリセイス、そして一番後ろが盾に隠れた兵士たちというのがうまいな…と思った。
まず一番手前の人物が背中向けている、というのがドラマチックな印象を与えると思うし、後ろに盾が並ぶのが壁っぽくなっていて、ブリセイスがむりやり連れていかれる逼迫感を出している気がした。

こうした構図だけではなく、アキレウスの表情もいいし、左手のポーズもかっこいい。
背中を向けている人は、さすが背中を向けるだけあってかっこいい背中。
ブリセイスの戸惑った表情も、ポーズを含めてよく表現されていると思う。


《ペプロスを着た女性(通称「踊り子」)》アウグストゥス時代(前27~後14年), ブロンズ(象嵌:銀、銅)、目:骨、石

この作品、正面から見るとほぼ動きがないかのように垂直的表現で構成されているように見える。
でも少し角度を変えると、腕の動きがよりドラマティックに見えるようになるし、右膝が少し前に出てきているのがよく分かって、動きが出てくるようになるので面白い。

全体を通してだけれども、今回出展されていた作品を見ると、この時代の手とか指の表現好きだな…と思った。


《燭台》《綱渡りのサテュロス》前15~後50年, フレスコ

黒っぽい壁に《燭台》というタイトルの区切り模様、その間にはケンタウロスとおそらくアキレウス?の小さい絵が描かれ、その上には《綱渡りのサテュロス》が描かれている。

この綱渡りがまた可愛らしいのだが、全体で見ても、こんな部屋素敵!となる。

黒い壁というのが、電気もない時代、蝋燭の火だけで大丈夫だったのだろうか?と少しいらぬ心配をしてしまったけれども、でもシックでかっこいいと思った。

ローマ風の部屋に住んでみたい気がしないでもない…

チラシと出品目録

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