“ぴいくん”の本名が気になって仕方がない!:高田崇史 「試験に出るパズル 千葉千波の事件日記」


久しぶりの高田崇史を読んでみようと、QEDシリーズとは異なるパズルシリーズに手を付けてみた。
QEDとは違ってライトな感じ(殺人事件はない)。

タイトルから分かる通りのパズルに絡んだ連作集になっており、必ずちょっとしたパズルが出てくる。そしてそれにちょっと似たような事件が出てくる、という形になっていた。

語り部の“八丁堀”もしくは“ぴいくん”と呼ばれている、名前が明かされていない浪人生には、眉目秀麗・明朗明晰・しかもお金持ちの千葉千波君という従兄弟がいる。

その語り部と千葉千波くん、それから語り部の腐れ縁の饗庭慎之介と三人で、日常の謎を解く、というのが大筋となっている。
今回収録されているのは以下の通り;

  • 「<<四月>>9番ボールをコーナーへ」 麻薬受け渡しの現場を突き止める話
  • 「<<五月>>My Fair Rainy Day」 レストランで黒真珠が突然なくなってしまう話
  • 「<<六月>>クリスマスは特別な日」 東京下町でちょっとした爆発が続く話
  • 「<<七月>>誰かがカレーを焦がした」 1時間ごとにカレーをかきまわすはずが焦げてしまった話
  • 「<<八月>>夏休み、または避暑地の怪」 双子のお坊さんと三つ子の小僧さんの話

解説の森博嗣氏も書いているが最後の「<<八月>>夏休み、または避暑地の怪」が一番面白かった。

嘘つき村と正直村にもじった話で、この三つ子が非常に曲者で、正直者と、嘘しかつかない者と、嘘と本当を交互に言う者、という、実にややこしくて奇怪で、パズラーの心をくすぐる子たちが出てくるのだ。

私としては「<<七月>>誰かがカレーを焦がした」も割と好きだった。
本当に大した謎でもないのだけれども、オチもそんなのか!とくだらなく面白かった。

どうでもいいが、今迄全然気付かなくて“おおっ!本当だ”と思ったところが。
教会での結婚式なんてロマンチックという“ぴいくん”に反論する千葉千波君。“ぴいくん”に新郎の誓いを言ってみろというと

「確か……富める時も貧しい時も、病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで、彼女を愛し、大切にすることを誓います―だろう」
「ほうら」千波くんは鼻で笑う。「いいですか。『死が二人を分かつまで』ですよ。これは裏を返せば、奥さんが死んでしまったら残された旦那さんは、もう何をしてもいいということです。もちろん今まで奥さんにかけていた愛情も、すべてそこで終わり。なぜならば、どちらかが死ぬまで、という契約ですから」
 ウィーン少年合唱団・天使の歌声コンサートの最前列で歌っていてもおかしくないような顔をしているくせに、何ということを言うんだろうね、千波くんは!

(p215)

さすが高田氏、細かいところまでよくお気付きで…

QEDシリーズと違って人物の不自然さが出ていなかったのは(千波君とか現実味ないとしても、それはそれで小説内では不自然にはならない)、女性がいないせいか…。どうも高田氏の女性描写ってあまり上手くないような…

とにかく、“ぴいくん”と同じくパズル解きは面倒くさくて好きじゃないけど、なかなか面白かったのでシリーズを読み進みたいと思った。


高田崇史 「試験に出るパズル 千葉千波の事件日記」 2004年 講談社

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