BANANA FISHしか分からなかったよ:三浦しをん「格闘する者に○」

三浦しをんさんの小説第二弾「格闘する者に○」を読み終わりました。

どうやら前に読んだ「白蛇島」のあとがきに書いてあった、「白い軽トラックが出てくる三部作(だっけ?)」の一作目のようです。白い軽トラックがちょろりと出てきたし。しかも、軽トラックに名前が書かれているのも同じだし、それに乗るのは男二人というのも同じでした。

今回の本は、非常に共感してしまうところが多く、それは多分、主人公が三浦しをんさんの分身!?って感じだったかもしれません。

主人公の可南子は就職活動中。でも彼女とその友達の砂子と二木君はてんでやる気がない。可南子なんて説明会に行く道すがらに感じのいい古本屋さんを見つけてしまって、手が抜けるほど古本を買い、ご満悦で家に帰る電車の中で、はたと説明会に行くために出かけたことに気付くしまつ。しかも、平服で、と書かれたら、本当に私服でいくし…。

結局、可南子は出版社にしぼるのですが(漫画を世に生み出すのに関与するため)、面接やらで散々ひどいめにあいます。結局、就職活動の顛末までは書かれていないのですが、K談社やら集A社やら丸川書房(これが角川と気付くのに3ページ使ってしまいました。不覚!)やら出てきて、その面接の様子がリアルなところからいって、三浦しをんさんも受けたのかな~と思いました。

この可南子の就職活動話と進行して、可南子の実家事情が出てきます。可南子の父親は政治家の家へ婿養子に入り、今は政治家。しかし可南子の母親は彼女が小さい時に亡くなり、今は継母とその人との間にできた息子(可南子とは半分しか血が繋がってないことになる)と住んでいます。父はというと別居状態。この藤崎家を誰が継ぐか、が問題となっているのです。藤崎家としては可南子だけれども、父親のお付きの谷沢は弟に継がせたい。父親はまったく分かってない人で、それもいらつかせる。

とそんなドロドロの中、弟は家出をしてしまいます。

最後は、弟が帰ってきたことで、どこかぎくしゃくしていた継母と弟と可南子だけの生活はましになり、可南子の恋人のおじいさんは中国に旅たってしまい、就職口は決まらない、という状態で終わります。といっても尻切れトンボというわけではなく、「こうやってちょっとうだうだした生活が続いていく」みたいなノリの終わり方でした。

出版社への就職活動といい、その面接での漫画論といい、三浦しをんさんの得意分野のためか、とても面白かったです。

面白い描写があったので一つ;

(親族・後援者会議にて)
外は五月晴れというのが本当にふさわしい、「宇宙直結」のお天気だというのに、私はこうして足の痺れと戦っている。窓が切り取った、冷たいほどに青く見える空をぼんやりと眺め、それから室内に視線を戻した。咄嗟に順応できない目が、部屋の中を暗緑色に見せた。まるで沼の中の集いのようだ。

p104

(三浦しをん 「格闘する者に○」 草思社 2000)

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