著者近影はもっと良い写真を選んでほしい!:柴田よしき 「炎都」


そういえばこの頃柴田よしき読んでないや、と思って、時系列順でいけば次の作品になる「炎都」を読んでみた。

ら…

あまりにも今までのと違いすぎてびっくらこきました。
冒頭に紫式部が出てきて、これと同時進行で読んでるものの主人公が紫式部だったから、「こりゃ同時進行で読むのに丁度いいやぁ~」なんて思ってたのが……

なんとまぁのんきだったことよ。
ちなみに紫式部は冒頭にちょろって出てくるだけで終わりです。
大体時代は現代で、王朝の“おほほ…”という話ではなくて、パニック映画のような内容でした。

舞台は京都。
登場人物は多すぎて把握できず。
でもメインなのは、地質調査会社の技師・木梨香流。それから、香流と一目ぼれし合う仲となる真行寺君之。

その他にもちょろちょろ出てくるけど、面倒くさいので割愛。
というかまとめるのも面倒くさい話だな、これは。

簡単に言うと。
真行寺君之ってのは実は、一条天皇の生まれ変わり。
一条天皇には彰子がお産で里帰りしている間に懇意になった姫がいた。その姫の名前は花紅姫。
ところがその姫はこの世の者ではなく、安倍晴明によって滅ぼされてしまう。ところが滅ぼされたのは肉体だけ。怨念となって一条天皇にとりつき、一条天皇は早世してしまうのだった。
花紅姫はまた蘇り、京都の天狗をそそのかし、貴船の龍を閉じ込め、安倍晴明が封印した魑魅魍魎を甦らせてしまう。

突然京都に地震が襲う。もちろん花紅姫の仕業。それによって周りからの交通網がすべて遮断されて、京都は孤立無援となってしまう。
そんな京都を襲う魑魅魍魎ども。

その花紅姫を阻止しようと真行寺は、ヤモリに導かれて奔走する。
まさに映画を観てるみたいな小説だった。すごいエンターテイメント小説!って感じ。
読んでる時は面白いけど、再読するものじゃないな、これは。

それにしても見事に京都が壊滅されていくのだが、フィクションの中とはいえ、京都がつぶれちゃうのはちょっと惜しい気がした。
確かに魑魅魍魎が跋扈してそうな京都。作者もあとがきで

 この町には魔が生きている。…(中略)…私は、日々出逢う小さな魔に密かに心躍らせ、垣間見る妖怪達の顔に憧憬を抱き、いつの日か彼等が私に話しかけてくれるのを心待ちにしている。
 この物語は、そんな彼等京の都に棲む魔物たちへの、熱いラブレターなのである。

(p469)

と書いてあるけど、確かに熱いラブレターですな!
普通、京都 + 魑魅魍魎となったら陰陽師って感じだけど、そんな悠長なものじゃなくて、ゴジラ風パニック映画風小説にしたてあげるとは、柴田よしきさんの独創性なんでしょうね。
再読するものじゃないと言いつつ、続きが読みたい。というか読みます。


柴田よしき 「炎都」 2000年 徳間書店

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