“Hercule Poirot”がポアロと気付くのに少々時間がかかってしまった:Agatha Christie “The Hollow”


いつだったか実家に戻った時に、読む本がなくて、実家の本棚からかっぱらってきたアガサ・クリスティの”The Hollow”。
随分古い本で、どうやら父が若い頃に読んだものみたいだった。
ちょびちょび読んだせいもあるだろうけれども、殺人が起きるまでが長い!
そして犯人当てになるまでも長い!
あまり殺人事件がスポットライトを浴びる感じではなく、どちらかというとキャラ達の動きが焦点にあたっている感じだったった。
さながら映画の”The Gosford Park”みたいだった。というか逆か。映画がアガサ・クリスティの世界みたいだったのか。

アガサ・クリスティは遠い昔、高校の頃に読んだきり、あまり読んだことがなくて、当時としては「本格派」と呼ばれる推理小説が好きなのもあって、アガサ・クリスティのようなまどろっこしい作品は苦手だった。
でも今回読んでみて、イギリスに住んだこともあるというのも大きいと思うが、このゆったりとした感じを楽しめる余裕が出来た気がする。何も推理小説ってのは、“推理”の部分だけをがつがつと追い求めなくてもいいのね、みたいな。
肝心なお話はというと、その性質上、ネタばれを含みそうなので注意!



まず登場人物が、推理小説ってだけあって、割と沢山出てくる。
父が読んだ時に本の裏表紙に、登場人物表を作ったみたいで、それが大変役に立った。ついでに、お尻の方の裏表紙には地図まであった。

  • John Christow : Doctor
  • Gerda Christow : his wife
  • Beryl Collie : John’s secretary
  • Lucy Angkatell (Lady) : The Hollowの女主人
  • Sir Henry Angkatell : Lucyの旦那
  • Henritta Savernake : artist
  • Veronica Cray : actress
  • Midge Hardcastle : shop assistant
  • Edward
  • David
  • Gudgeon : butler

補足すると、Lucy、Heritta、Midge、Edward、Davidは従妹同士で、Lucyの父親はAinswickの当主であった。しかしLucyは女性のためinheritすることができず、Edwardへいき、次にDavidにいく手はずとなっている。

Ainswickでの思い出は彼等にとって夢のようらしく、よく話に出てくる。
さて、話の発端は、皆がLucy達の邸The Hollowに週末集まるところから始まる。
大変魅力的で、ちょっとエクセントリックな感じのLucyを慕って皆集まるのだが、その実人間関係は割と複雑だったりする。

まず、JohnとHenrittaは不倫関係にあり、EdwardはHenrittaの事を昔から好き。

Gerdaは、すばらしく優秀なJohnには不似合いなくらい鈍い感じの女性で、知的な人が集まるThe Hollowに行くのは苦痛でしょうがない。

JohnとHenrittaの関係は皆、暗黙のうちに容認しており(ただしGerdaは知らない)、Edwardは嫉妬を募らせている。

Edwardが結婚しない限り、Ainswickの直血の相続者がいなくなるが、EdwardはHenritta以外結婚する気はないよう。

更に複雑化するように、皆が集まった晩に、The Hollowの近所に住む女優・Veronicaがマッチを借りにやってくる。
そのVeronicaこそが、Johnが昔付き合っていた相手で、結婚寸前までいったものの、Veronicaがハリウッドめがけて進んでいくのに着いて行く気がなく破局してしまったという過去を持つ人だった。
Veronicaは自分の家までJohnにエスコートしてもらい、そこでまぁ何かが起きたようだった。

そして次の日、プールサイドでJohnは銃で殺されてしまう。
銃声でほうぼうから現れた人々が見たのは、Gerdaが銃を持っているところだった。
そして虫の息のJohnが発した言葉は、”Henritta”であった。
そこに偶然居合わせたのが、ポワロだった、というわけだった。
その後の調査で、Gerdaが持っていた銃は、Johnが殺された銃とは違っており、凶器は未だ見つからず。

事件当事者たちは、捜査に協力すれども、どうもすべてを語っているわけではない模様・・・といった態。
ま、簡単に犯人を言ってしまうと、360度回ってこの人って感じの人だった。
そんなことより(?)、殺人事件の後に始まるロマンスもなかなか素敵だった。
今までHenrittaしか見えていなかったEdwardが、実は自分が見ていたHenrittaは昔のHenrittaであり、今のHenrittaは大分変ってしまっていたことに事件を通して気付く。
その時、周りを見渡してMidgeの存在に気付くのだった。今までは“小さなMidge”という印象しかなかったのに、Henrittaが昔のHenrittaでなかったよくに、Midgeも女性として成長したことに気付くのだ。
そしてこれまた、驚くほどスピーディーなのだが、Midgeにプロポーズをする。
お昼御飯を食べているときにプロポーズするのだが、その時のMidgeのセリフが可愛い;

“Well, Midge dear, what about it?”
Midge looked up at him. There was a catch in her voice. She said:
“It seems so extraordinary—to be offered heaven on a plate as it were, at the Berkeley!”

(p157)

こんな早くに婚約しちゃって大丈夫かな、という危惧はまたもや早く現実となり、一回破局するのだが、ご安心を。またもっと深い絆で結ばれるのだった。

って、あれ?全然推理小説の感想のようにはなっていない!!!
ま いいや。

私としては、Johnが嫌いだったので、あまり同情できない部分があって、真相が明かされてからの、ダイイング・メッセージの意味を知ってもっと嫌になったので、こういうほんわかの方に意識がいってしまってもしょうがなかったのだ。

と言い訳めいて終わるのもなんだけど、久しぶりのアガサ・クリスティはまずまずだった。
「オリエント急行」とか読んだけど忘れちゃったから、これを機に読んでみよっかなー


Agatha Christie “The Hollow” 1946, Fontana Books

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