やっぱり美少女が出てくるね:恩田陸 「ユージニア」


久しぶりの恩田陸。図書館でお目当ての本がなくて、何を借りるか迷うと必ず手に取るのが恩田陸のような気がする。
半分寝ながら読んだのが悪いに違いないのだが、終わりの方は意味がちょっと分からなかったし、結末は腑に落ちなかった。
それでも雰囲気というか、話の進め方はやっぱり好きだったけれども。

今回の話は、基本的に誰かに話しかけている形で進んでいく。丁度「壬生義士伝」みたいに。
そして挿話的に語り手のエピソードが三人称で描かれている。

対象となる事件は、加賀(多分)で起きた無差別毒殺事件。青澤家というその土地の名士の家にて、親子三代の誕生日という目出たい席で、近所の人も招かれたりなんかしてお祝が開かれている時に、お酒とジュースが届けられる。送り主が知り合いだったのもあって、皆でそのお酒やジュースを飲んだが最後、皆死んでしまったのだ。

この話の面白いところは、この事件の十年くらい経ってから、この事件を題材にした本が出版され大変評判になったのから、また暫く経っているという設定のところ。
つまり、事件のことを語っている本書の中に、もう一冊同じ事件を題材にした本が存在しているのだ。
そしてしばしば、この本について出てくる。
というのはその本を書いたのは、事件に居合わせた子供だったのだ(ちなみに最初の語り手はその作者である)。

一応ミステリ仕立てになっていて、誰が犯人だったのかというのにも迫ってくる。
犯人も提示されるのだが、最後の終わり方の腑に落ちないのが、犯人の愚痴のような感じで終わるところ。
なにせ事件から時間が経っているから、ただの中年に成り下がってしまった、というその空しさを表現するのはいいけれども、やっぱり私としては、最初からの雰囲気のように夢心地に終わって欲しかった。

それでもやっぱり恩田陸らしい鋭いところもあって;

 私たちは、生きていくには、他人から「見えない」ほうがいいということを本能的に知っています。転校生は目立っちゃいけない。人の目につかない、前からいたような顔をしてなくちゃならない。「見える」人間の背負うリスクが怖いわけです。だから逆に、自分を他人と差別化したい人は、他人から「見える」ようになりたいと願う。
 あの家は「見える」家だった。中の住人も。
 …(中略)…
 だけど、尊敬と軽蔑、憧れと妬みは紙一重。
 長い歳月の間に、彼らは、自分たちに「見えない人間」を増やしていってたんじゃないでしょうか。
 「見えない人間」の奉仕と忠誠を、当然のものと思うようになっていたんじゃないか。
 「見えない人間」が何を考えているか、どれだけ存在しているか、想像しようとしなくなったんじゃないか。(p195)

全然関係ないけど、高田崇史の「式の密室」だかでの、式神の考察を思いだしてしまった。
何はともあれ、やっぱり恩田陸の書く雰囲気が好きだなと再確認した。


恩田陸 「ユージニア」 平成17年 角川書店

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