「吉村芳生ー超絶技巧を超えてー」@神戸ファッション美術館

行った日:2021/04/10
★★★☆☆
本日のBest:《未知なる世界からの視点》

全体的な感想

東京で開催されているのを見て行ってみたいなと思いつつも行けず。
そしたら神戸ファッション美術館でも開催されると知って、もちろん行かないわけはない。

世の中、コロナで大変なことになっているけれども、以前、神戸ファッション美術館に行った時には、その地域からして人が少なかったので、大丈夫でしょう…ということで。
案の定、最寄り駅へ向かう六甲ライナーから、そんな人もおらず。美術館もそんな人がいなくて、ゆったり見れた。

で、肝心な展覧会内容だけれども。

平凡な言葉でいうと「すごい」の一言。

鉛筆や色鉛筆という、それこそ絵を描かない人であっても幼少期から必ず手に取ったことのある、日常的な道具を使って、非凡な作品を作り出しているというか。

まさに非凡という表現がぴったりで、入ったところからびっくり。

入ってすぐにある《ドローイング 金網》は、金網を紙の上にのせて、跡を残して、その跡に沿って鉛筆で描写したもの。ただただ金網。

そうかと思うと、写真を引き伸ばして小さいマス目で区切り、そこに番号をふる、別の紙に同じくマス目を区切り、写真の番号に付随するルールの通り、マス目を埋めていく…という気が遠くなることもやっている。

どういうことかというと、例えば《ジーンズ》という作品↓

《ジーンズ》1983年 鉛筆/紙 150.0 x 110.0 cm 個人蔵 (展覧会チラシより)

写真にマス目をひいて、数字を入れる(ちなみにめちゃくちゃ細かいマス!!!)
数字のルールとしては、0だと斜線を1本、1だと斜線を2本…と9段階くらいまで設定する(ちょっと数字は定かではない…)
別の紙でマス目をつけ、その数字に沿って斜線をひいていくと…写真の内容がコピーされる、というわけ!

ファックスの原理の段かい有りバージョンといえばよいかしら…

そのマス目の細かさを見ると、本当に気が遠くなる…

エッチングも同じような手法で行っていて(そもそも版画からスタートしているので、こちらが先かも)、マスごとに腐食の回数を変えているらしい。

手順としては、まず全体に斜線をひく。それから1回目は全体的に腐食。次に1番明るいところはカバーして腐食、つまり明るいところ以外を腐食させる。次にそれに追加して2番目に明るいところをカバーして腐食…ということを繰り返す。
そうすると同じ斜線だけれども、1回しか腐食していないところは薄い色に、2回のところは次に薄い色に…と色のグラデーションができる。

と、意味分かるかしら…自分で書いてて、意味不明になってきたよ。

とにかく、恐ろしく手間のかかることをしているのです。
「機械によってこういった制作の機会が失われてしまった。それを取り戻す」みたいなコンセプトだった(気がする)。

とりあえず、本当にすごいので、見てください。百聞は一見に如かず!!!

鉛筆画に関しては、こんな感じで「すごい・・・・・・・」で終わるんだけど、色鉛筆画はより堪能できる。

詳細は次の「印象的だった作品」の中で。

印象的だった作品

《モッコウバラ》2000年 色鉛筆/紙 117.0 x 80.5 cm みぞえ画廊 (展覧会チラシより)

展示されていた色鉛筆の作品すべてに言えることだけれども、色鉛筆の作品と思えないくらい大きい!それが何よりもびっくり。色鉛筆でこんな大きな作品が制作できるんだ…という、よく考えたらアホみたいな感想が浮かんでしまう暗い衝撃的。

この《モッコウバラ》に関しても、その大きさにまずびっくりする。
そして色鉛筆でありながら、力強いスーパーリアリズム的作品にもびっくり。

多分、油絵とかそういった絵具でスーパーリアリズムな絵を描かれるとつるんとしたイメージになりそうだけれども、そこは色鉛筆らしさが出ている。

つまり、やわらかい空気感になっているのだ。
描かれている花の質感が柔らかいというよりも、言い方が変なんだけれども、描かれている紙がすごく柔らかく感じるというか、絵画自体が肌触りのいいタオルみたいな柔らかくて暖かそうな感じがするというか…変な表現ですが…

色鉛筆の可能性を思いっきり提示されている気がした1作。


《コスモス》2001年 色鉛筆/紙 162.0 x 112.0cm 個人蔵 (ポストカードより)

遠くから見ると色鉛筆にまったく見えない!

今まで、色鉛筆というと、ふわっとしたイメージが出来上がる画材というイメージだったけれども、それを完全に覆された。

近づくとすごい色鉛筆なんだけど。それも面白い。

しかも、近くでピント合っているところも、遠くのピントが外れているところも塗り方がまったく同じで(確か色鉛筆の塗り方っていくつか種類があったと思うけど)、ある意味通り一辺倒の塗り方なのに、遠くで見ると、ピントのON/OFFがはっきりする。

すごいな…


《フジ》(部分) 2005、2006年 色鉛筆・墨、紙 112.0 x 194.2 cm 個人蔵 (ポストカードより)

これの面白いところは、表面にダメージを与えているところ。
どういった手法でダメージを与えているのかは、説明などに書いていなかったけれども、縦の線が入っていてちょっと雨が降っているようにも見えて面白い。

これも色鉛筆ならではの表現方法といっていいのではないだろうか。

例えば、水彩画などでも洗い流すということもできるけれども、そうなると絵具が混じってしまう。色鉛筆ではそういった混色・にじみなどはないので、水彩画とはまた違った表現になっていた。


《コスモス》 2005年 色鉛筆、紙 116.9 x 80.5 cm 個人蔵 (作品リストNo.48)

残念ながらこちらはポストカードがなく。

こちらは特にダメージが激しくついていて、コスモスのいくつかは輪郭の線のみで表現されていたりして、その緻密に描かれているところと、まったくそうでないところの緩急が面白かった。


《無数の輝く生命に捧ぐ》(部分) 2011-2013年 色鉛筆、紙 202.0.x 714.0 cm 個人蔵 (ポストカードより)

ポスターにもなっている目玉作品。
サイズといい、圧巻。

311の東日本大震災で亡くなった方々の命を花に見立てて…ということだ。

藤の美しさをあますなく伝えている作品と言って差し支えないだろう。
感想を書き連ねることが無粋に思えるくらいの、圧巻の美しさ。

因みに右端が未完っぽくて、逆に、この圧倒的美しさが完璧でないところが魅力的にも感じてしまった。

あと、単純にどうやって描いているのかも垣間見れて面白いというのもある。
そういう観点では絶筆となって、作品No62の《コスモス》も興味深い。残っている部分を見ると、まったく下絵がなく、マス目しかない。ということは、鉛筆画の時のように、マス目をひいてマスを埋める方式で描いていたっぽい…
こちらの《フジ》では下絵っぽいものがうっすら見えるけれども、マス目もあった。


《未知なる世界からの視点》 2010年 色鉛筆、紙 202.0 x 1022.0 cm 個人蔵 (ポストカードより)

本日のBest。

ちょっとこの画像では美しさがうまく出ていないきがするのだけれども…

画面上部の空間は、もっときれいな薄紫で、ゆらめきが表現されている。
画面下部の黒いところは、濃い藍っぽいで、画像よりもっと濃い。

この絵は、川辺に咲く菜の花たちと、川に映ったのも描いてそれをひっくり返したの。
実際は実像の方の背景は暗くないのだろうけど、暗くしているのが、また不思議な雰囲気にしている。
白い根のうごめきも実像と虚像の橋渡しみたいになってて面白い。

《フジ》に負けない大きな作品。

それまでの作品が、ひたすら写実性を追い求めている感があったけれども、こちらはそれこそ、その先を行っている気がした。
写真的なピントのON/OFFとはまたちょっと違う、詳細に描くところ(例えば根)と、全体的と描くところ(菜の花)との緩急の付け方がある感じがした。

たぶん、横長なので、単純なピントON/OFFでは辻褄が合わないということなのだろうけど、それが面白い。
水面とひっくり返すことで、より抽象性が出ているのも、この描き方だからこそかな、と。

単純に色が好き、というのもある。

展覧会チラシ+作品一覧

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