「上村松園」@京都市京セラ美術館

行った日:2021/08/28
★★★★★
本日のBest:《人生の花》

全体的な感想

このブログの記念すべき初めての投稿が、暑苦しいほど愛を語った上村松園についてというくらい、上村松園が好きなので、京都市京セラ美術館で開催されている「上村松園」展に行かないわけはなく。
丁度、京都に行く用事があったので、喜び勇んで馳せ参じたのでした。
本当は前期・後期と行きたかったけれども、このご時世、しょうがない。後期だけ行けたのでも良しとしよう。

いや~~~~やっぱ素敵だったーーーーーーー
星5つは完全なるひいきですが。

今まで、奈良に行くたびに松伯美術館に通うということをしていたので、ちょこちょこ作品は見ていたのだけれども、よく考えたら、”上村松園展”みたいなのは行ったことがなく、
そうなると、画業を順を追って見たことがなかったわけです。
もちろん、本とかでは見たことがあるけれども、やっぱり本物を時系列で見ていくと、画風の変遷が本当によく分かる。

そうなると、ただ単に「好き―――」と思ってたものの、ある時期はあんまり好きじゃない…というのもあったりして、「ああ、時々”おやおや…”と思っていたのはこの時期のだったのか!」という発見があったり。

ちなみに、「うーん…」と思った時期というのは1911年頃の作品。
ちょっと池田蕉園の絵に近い感じになっていて(特に目元)、意識していたのかな…と思ったり。
やはりそれを脱却した後の、目元の涼しい絵の方が好きだなーなんて。

こんな感じで「上村松園」という一人の画家のなかでも、豊かな作風の変化が見られるのは、画家にフォーカスを当てた展覧会ならではですな。

ちょっと意味不明な感想になってきたところで、印象的な作品を挙げていきましょう。

印象的だった作品

作品を挙げる前に一点お断りを。
以降の絵は図録から取ってきています。あまりきっちりとスキャンしていないので、若干ずれてたりする可能性がありますので悪しからず。

《婦女之図(ものおもひ)》

ちょっと芝居がかった立ち姿が素敵だなと思い。
ふとした表情もよく描かれているし、顔が向いている側の余白が、物思いの雰囲気を良く出している気がした。

《人生の花》

本日のBestにさせてもらった《人生の花》。
以前も見たことのある作品だけど、本当に本当に好き。
まだ初期の作品ということで、あまり”上村松園”感が出ていないかもしれないけれども、その後の上村松園の目指そうとしたであろう、女性の気高さ・美しさが表れている気がする。

前を歩く母親の凛とした姿。その後ろを歩く花嫁となった娘のうつむく姿は、本当に可憐で美しい。
もちろんこうした楚々とした女性は前時代的と捉えられるところも思うけれども、ただ弱弱しいだけではなくて、きゅっと結んだ口元には決意のようなものも感じて内に秘めたものが伺える。こうした美しさもあるんだ、と感じさせる作品。

《花ざかり》

《人生の花》の別バージョン。
これはこれで素敵なんだけど、やはり《花ざかり》の花嫁さんの顔の方が好きだなー。
あと、母親の袖の持ち方も《人生の花》の方がちょっと芝居がかってて、それがどっしりとした、凛とした感じで好き。

似たようなバージョンを並べることで、かえって《人生の花》のどこが好きかが明確になった気がする。

《粧》

合わせ鏡で鬢の様子を確認しているところを描いた一枚。
鏡に顔を写す趣向が面白いけれども、何よりも気に入ったのが、割とざっくりと足を崩しているところ。
裾が乱れている感じが、飾り気のない、ほんの一コマのように見えて、すごく好感が持てる。

帯揚げまで乱れていて、髪を一生懸命結ってたのかな…と想像させられる一枚。

《姉妹三人》

こちらも前にも見たことあって、可愛い~となった絵。

隣によく似た《姉妹之図》が飾られていて、こちらの方が「すてき!」と思えるのは何でだろう…と考察ができる憎い展示になっていた。
本当にちょっとの差だけれども、やっぱり末っ子ちゃんの顔がよく見えていた方が愛らしさが出て良いよね、とか、三人がぎゅっと密集した感じが良いよね、とか、三人の頭の並び方のリズムが《姉妹三人》の方が良いよね、とか色々と見えてくる。

《姉妹之図》

ここからちょっと好きじゃないですが2枚続きます。

《むしの音》

なんかちょっと媚びた感じがして、うーーーん…上村松園の美人図といえば、「可愛い」よりも「凛とした」「美しい」なんだけどな…と違和感を感じてしまう。

首のかしげかた、目のやりかたが媚びてる感じが、どうしてもしてしまう…
構図は好きなんだけれども。

《雪吹美人図》

これで分かる通り、目がちょっとこれまでのと、その後のとで違う。
前述の通り、池田蕉園に似てる気がする…目のぼかし方とかが…

そして着物の線の太さは、他の作品でも見られるけれども、こちらはちょっとうるさい感じもしてしまう。

《花がたみ》

と文句を言った後に部屋を変えると、どーーんとこの絵があって圧巻。

何回か見たことあるし、下絵やスケッチも見たことあるけれど、やはり何度見てもすごい。

きっちり描き込まれた可憐な着物の柄に対して、その乱れ具合といい、顔といい、不自然な指の長さといい、対比によって狂乱の様子が強調されている。
更に散る紅葉によって、不安定さも表現されているのが秀逸。
今回、髪の毛もじっくり見たところ、髪の毛もいっぽんいっぽん計算されているかのように、乱れ具合が物狂いの様子を演出しているように見えた。

《清少納言》

新たに発見されたもので本邦初公開らしい。

《花がたみ》と同じ壁に飾られていて、《花がたみ》で受けた衝撃が浄化されるようだった…

それくらい可憐で、色といい、雰囲気といい美しい。

こちらの髪の毛は、流れが穏やかで、そういうところでも表現されるんだなという発見。

ちなみに、髪の毛はめちゃくちゃ細い線で描かれていて、結構かすれていたりもする。
つまりきっちりとした線で描かれているわけではないが、それがかえって自然に見えた気がした。
あと髪の毛は、薄く墨(かな?)で全体的に塗られた上に描かれているというのも、線があまり強調されていないポイントかなと。

《簾のかげ》

この優雅な姿にやられた!
先ほどの《むしの音》に似たような構図だけれども、そして微笑みを浮かべているという点では表情も似ているけれども、全然雰囲気が違う!

目がしっとりとしている上に、小首をかしげるというあざとさもない(言い方悪くてすみません…)。
優美な体の線が、扇子の持ち方が、舞踊のポーズみたいで素敵…

強調されていないけれども、ほんのちょっとした体の傾き、振袖の傾きが優美さを出していると思う。
このちょっとの加減が難しいんだろうな‥と思って感嘆してしまった一枚。

《序の舞》

対面したとき、「《序の舞》きたーーー」と心の中で叫んでしまった。
こんなにも上村松園好きを公言してるくせに、この代表作中の代表作にお目にかかるのは初めて!
なんと、これは後期しか展示されなかったみたいで、後期に来てよかった!となった(ちなみに前期の目玉であった《焔》は何度も見たことがあったので、あまり未練はない)

思っていたよりもずっとずっと大きいんだな、というのが第一印象。

右手の袖がかかったふんわりとしたところや、前を見据える視線、一歩を踏み出そうとしている感はあるけれども、それと同時に静寂さも感じられる。

着物や髪型も華美すぎず、でも飾られていて、この絶妙なバランスもすごい。

ただ「本日のBest」にしなかったところは、本当に本当に少しだけ、顔が怖かったな…というところ。。。
崇高な感じがしたけれども、気負わず、ふとした表情のなかの美しさ・気高さが上村松園のすばらしさだと勝手に思っているので、そういう意味では、思ってたのとちょっと違ったかな…と思った。

もしかしたら期待しすぎていたのかもしれないし、あちこちで見過ぎただけなのかもしれないけれども。
それが今の率直な感想でした。

《皷の音》

《序の舞》以降から、松伯美術館でよくお見掛けするような絵が展示されていたので、これまで見ていたのは後期の作品だったんだな、というのが分かった。

こちらも以前見たことがある(もしかしたら別バージョンだったかもだけど)けれど、やっぱり好きな作品。

この一瞬をとらえていて、静止しているようにも見えるところを、翻った袖によって動きが出ているのが、絶妙なバランスだな、と。

そしてこういった、凛とした表情が本当に好き。

《男舞之図》

これも前も見たことがあるけれども、やっぱり好きだなーとなった作品。

何よりも三日月型っぽい構図が好き。
烏帽子の紐まで優美な感じがする。

《初夏の夕》

これが絶筆とのこと。

割とシンプルな絵ではあるけれども、袖の曲線が平凡から救い出している気がする。
と偉そうなことを書いたけれど、こういうシンプルなものこそ、雰囲気を出すって難しいということは重々承知の上で。

あといくつか、表情にはっとしたところがあった気がするんだけれども、図録を見ても分からなった…
観た直後の記憶がフレッシュのうちに何でメモしなかった!?と後悔…
とりあえず、やっぱり本など印刷物では良さってあまり伝わらない、実物に勝るものはないはないよね、という再確認&反省ということにしておこう。

展覧会チラシ&作品一覧

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