「イスラエル博物館所蔵 印象派 光の系譜―モネ・ルノワール・ゴッホ・ゴーガン」@あべのハルカス美術館

行った日:2022/3/11
★★★★☆
本日のBest:レッサー・ユリィ《風景》

全体的な感想

用事があったため有休をとり、その用事も終わったので中之島美術館に行ってみよう~と行ってみたところ…平日だからってたかをくくっていたのがいけなかった。当日券完売!

急遽、明日行く予定だったあべのハルカス美術館へ!

結果…よかった~~「印象派」と銘打っているものの、印象派前後もカバーされていて、豊富な作品群。

セザンヌのあのスタイルを確立する前の作品や、ルノワールの風景画、ゴッホの印象派もどきの作品、ゴーギャンのあのよく見知ったスタイル前の作品、とあまり見たことのない作品もあって、新たな発見もあった。

新たな発見といえば、レッサー・ユリィという画家、名前を聞いたことがなかったのだけれども、すっごくすっごくすっごー----く良かった!!!
『夜のポツダム広場』を見て、「あ、もしかして本で見たことがあるかも」と思ったけれども、日本初公開なので確実に本物を見たことなく、他の作品も全然知らなかったので、この画家のことを知れただけでも、この展覧会見に来てよかった!

作品だけではなく、展示方法もなかなか印象的だった。
各章にイメージカラーがあって、壁と床がその色になっていた。
「1 水の風景と反映」では水色、「2 自然と人のいる風景」は緑色、「3 都市の情景」はグレー、「4 人物と静物」はピンク、といった感じで、いずれも印象派らしいきれいな色合いで、結構作品に合っていたと思う。
この展覧会は、あべのハルカス美術館に来る前には東京の三菱一号館美術館で開催されていたのだけれども、三菱一号館ではこんな色でなかったはずだから、それはそれでまったく印象が違っただろう。そう思うとどっちも見てたら、展示によってこんな印象が違うんだ!と実感できて面白かったかもと思ったり。

何はともあれ、非常に満足度の高い展覧会だった!

印象的だった作品

今回は図録を買わなかったのでポストカードとチラシの裏、それといくつか写真撮影がOKだったのでその写真と。
それでもないものは(そしてこっちの方が多い)、イスラエル博物館へのリンクを貼っておいた。
(イスラエル博物館HPから画像ダウンロードしていいのかよく分からなかったので…)

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《川沿いの町、ヴィル=ダヴレー》

画像では空がピンクがかっているが、本当はもっと青味がつよく、山際にうっすらピンクがかっているのみ。それがなんとも美しい色合いを出している。

コローの作品のほとんどだけれども、木の葉部分がもわもわっと描かれていて、その上から時折葉っぱや枝が点描や細かい線で描かれている。それが夢心地な雰囲気を醸し出してる気がする。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《舟上の釣り人》

残念ながらこちらの作品は博物館HPにもなく。

川が真ん中にあって両脇に木や釣り人がいる、V字の構図の作品。
V字の中心がうっすらピンクで《川沿いの町、ヴィル=ダヴレー》にも通じる色調なのだけれども、こちらの方が空が開けてる分、明るく感じた。

また釣り人の帽子の赤が鮮やかで、それも良いアクセントになっていた。

ただ、タイトルに”舟上”とあったけれども、あんまり舟っぽくなかったので、タイトル見るまで船の上にいるとは気付かなかった。

ポール・セザンヌ《川の湾曲部》

好きとかではなく、セザンヌってこんな絵を描いてたんだ!という純粋な驚きから。
セザンヌはあまり厚塗りのイメージがなかったので、この塗りたくった感じにびっくり。

アルフレッド・シスレー《ロワン川のほとり、秋の効果》

博物館HPの色合いは結構きついけれども、実際はもうすこし白っぽく彩度が低い。
ピンクっぽいのと青色の組み合わせが好きだった。

また、枝が踊るように描かれているのが、もの悲しい秋というより、もっと楽し気な印象を与えていた。

アルマン・ギヨマン《川の景色》

これまた写真と実際の色が全然違う!こんな怪しげな色じゃない!

エメラルドグリーンが非常に効果的に使われていて、ところどころに入っているピンク・水色との相乗効果がすごく素敵だった。

工場からもくもく出ている煙を見ると、どうしても今の感覚だと「公害…」と思ってしまうけれども、当時は近代化の象徴だったんだろうなーと考えると、時代によって印象が変るんだなと興味深い。

あと、このギヨマンという人。解説によると、昼間仕事をしながら絵を描いていたのだけれども、宝くじがあたって仕事を辞め、絵に専念するようになったそうな。
宝くじ…なんと夢がある…!

クロード・モネ《睡蓮の池》

チラシにも使われている、本展の目玉とも言えるモネの《睡蓮の池》。
抑えられた色調で描かれていて、とても素敵だった!

空の映り込みの色合いは、さすがモネだな…という複雑で美しい色。

レッサー・ユリィ《風景》

本日のBestなのに博物館HPにも、ポストカードにもなかった!!!残念すぎる!!!
おそらく三菱一号館美術館では撮影OKの作品だったぽく、他の方がブログで写真を貼られていたので、参考までにこっそりリンク貼っとく

他のレッサー・ユリィも良かったのだけれども、これが一番気に入ったのは、シンプルにとてもカッコよかったから。

抑えられた色でありながら、コントラストが非常に激しいので、構図が難しいと思うんだけれども、この構図がめちゃくちゃかっこいい。水平が強調される構図の中で、垂直線となる木のなかで一番目立つのが絶妙な角度で縦の線を描く。っかー--!

あと、おそらく空と川(湖?)の白は後から塗られたもので、対岸の風景の色が地となっているもよう。白の中にうっすら透けて下地が見えている。このディテールがとても面白いことになっていて、白がタダモノではない感じもカッコよかった。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《モルトフォンテーヌ、小さな柵へと続く道》

最初の方に展示されていたコローの作品とは雰囲気が違って、色んなコローが見れてやった!という作品。

山葵色というのか、白っぽい緑、でもエメラルドグリーンではない色が主なる色となっていて、やさしい雰囲気を出している。
赤っぽい牛がいいアクセントになっている。鮮やかな赤ではないところが、このメインカラーとなっている緑色に配慮したからなのか、うまいこと調和されていた。

クロード・モネ《ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて》

こちらの画像の色も…こんな色じゃないんだ!案件。

もっと白っぽくて、太陽が真上にあるのがよく分かる。
”娘たち”というのは、この干草を女性と見立てているそうな。

なかなか厚塗りされていて干草が立体的。
彩度が低く、コントラストもないんだけれども、この立体的なのがよい仕事をしている。
うん、写真ではなかなか伝わらないかもね、とちょっと同情してしまうかもしれない。

ポール・ゴーガン《マルティニークの村》

「あ~~~やっぱりゴーギャンの色味が好きなんだよなぁ」としみじみ思わせる一枚。青が隠し味となって、暖色が非常に生えている。

ポール・ゴーガン《ウパ ウパ(炎の踊り)》

こちらの青の使い方も好き。炎のところに水色が入っていて、暗闇の中の炎を演出している。
たまたまなんだろうけれども、キャンバスの目が結構粗くて、それがこの少しおとぎ話のような物語のような雰囲気に妙に合っていた。

ポール・ゴーガン 《犬のいる風景》

これもこんな色ではない…因みにポストカードもこんな色合いで買うのやめた。

こんな濃くてけばけばしい色ではなくて、もっと穏やかな色だった。
それでいて、紫、緑、ピンクっぽい色と、その色の組み合わせが好き!となった作品。
晩年に描かれたらしく、最後までゴーガンの色彩好きだなとなった。

レッサー・ユリィ 《夜のポツダム広場》

これも撮影可だったけれども、写真よりポストカードの方がきれいなので。

遠景にあたる右上は霧がかっているのか、白みがかった色合いでもやもやっと描かれている。建物の輪郭も背景に融けてしまっているよう。

対して近景は筆のタッチがはっきりとしており、雨の風景がよく捉えられている。

そして何よりも色がきれい…青と黄色がなんともきれいな色を出している。

レッサー・ユリィ 《冬のベルリン》

車みたいにしっかり描くところと、背景の建物や人物、床など流すように描くところと、バランスが巧み。
結構人物がひょろりとしているのが特徴っぽいけれども、それがスタイリッシュさを出しているのかも。

エミール・ベルナール 《マリー・ルマッソンの肖像

これも色が…。背景がもっときれいな緑色だった。

洋服の描き方が面白く、濃いめの下地を塗ってから、上から白っぽい色を線で塗っている。なので下地の色が透けて見えるのが面白いディテールを作っている。

作品のサイズが結構大きいうえに、正面を向いているので、なかなか迫力のある作品だった。

エドゥアール・ヴュイヤール 《長椅子に座るミシア》

色んな種類のディテールが寄せ集まって画面を構成しているのが面白い。
しかも背景の方がそのディテールがはっきりしているのも面白かった。

まず背景がストライプ、無地をはさんで細かい模様と面を作り、手前になると、それぞれ異なった色グループの点描で構成されている、という感じ。

ごちゃごちゃしそうなところ、彩度を落としたなかで全体的にまとめているので落ち着いて見える。

エドゥアール・ヴュイヤール 《窓辺の女》

こちら、本当に小さい作品で(作品リストを見ると21.7×22.3)、それだからこそこの構図の面白さが際立っている。
正直、”女”というのはあまり判別できないんだけれども、作品の下寄りに窓が描かれているというこの構図が目を引く。

ピエール・ボナール 《食堂》

ボナールもその色調が好きな画家のひとり。

この画像では分かりにくいけれども、背景の水色も、テーブルクロスの水色も、ただの水色ではない!
いずれもピンクっぽい色合いも入りながら、複雑な色合いをしている。

と今まで書きながら気づいたけれども、どうやら私はきれいな色の水色(つまりグレーがかってない)を効果的に使っている作品を、”良い色調”と認識して愛でているようだ…

レッサー・ユリィ 《赤い絨毯》

タイトルについているだけあって、赤がビビットでとても印象的な色。
こちらも下地に濃い色が塗られているみたいで、その上に赤が、おそらくペイントナイフみたいなものでのせられている。

窓枠や椅子などもペイントナイフでまっすくな線を引いているみたいで、かっちりした印象を出している。それが縫物の布の流動的なのとのコントラストになっていた。

チラシと作品一覧

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