「アリス-へんてこりん、へんてこりんな世界-」@あべのハルカス美術館

行った日:2023/1/3
★★★☆☆

感想の概要

2023年最初に行った展覧会が、この「アリス」展。

『不思議の国のアリス』から始まるこのアリスの物語は、可愛らしいイメージも強いし、ファンシーな展覧会となっているのかな~と思っていたら…
さすがV&A、なかなか固い、見ごたえのある展覧会となっていた。

展覧会の一部は写真撮影OKとなっていたのも良かった。ただ不思議なのが、3点以上を一緒に撮らないといけないこと。1つをズームして撮ってはいけないし、だからといって広く撮ろうとすると撮影禁止の作品も写りそうになって、なかなか面倒…もとい、大変だった。
V&Aからの要望なのだろうけれど、3点以上を一緒に撮らないといけないなんて初めての体験。ちょっとなんでなのか教えて欲しいと思ってしまった。

あとグッズ。アリスということでさぞかし散財してしまうだろうと思ったら…
何もかもめちゃくちゃ高かったよーーーー!!!
円安のあおりなのかな…さすがにトートバッグに5000円以上出せないわ…となって、何も買わずに帰るはめに。。。個人的には財布に優しいミュージアムショップでした。

細かい興味深かった点は以下の通り;

興味深かった点

第1章

第1章は「アリスの誕生」ということで、アリス・リドゥル姉妹に語った発端から、出版時にドジソンが挿絵家のテニエルへ細かく指示出ししている様子など、誕生にまつわる裏話が見える。

絵画好きとして興味深いのは、テニエルがどんな絵を参考にしていたのかを知れたのは面白かった。
例えば『鏡の国のアリス』のこちらの絵のアリス↓

John Tenniel (1820-1914), Public domain, via Wikimedia Commons

ミレイの『初めての説教』をモデルにしているのではないかとのこと。確かに帽子やマフが似ている!

John Everett Millais, “My First Sermon”, 1863, Public domain, via Wikimedia Commons

でも実際に展覧会で来ていたのは、こちらの対をなす『二度目の説教』の方。こちらの方が、テニエルのアリスのリラックスした雰囲気に合っているのでは?とのこと。

John Everett Millais, “My Second Sermon”, 1863-1864, Public domain, via Wikimedia Commons

その他にも公爵夫人はレオナルド・ダ・ヴィンチの『醜い頭部』(もしくはクエンティン・マサイスの『醜女の肖像』)をモデルにしているのではないか…であったり。

テニエルのインパクト強いイラストも、アリスがこんなにも後世に語り継がれている要因の1つであることは間違いなく、それが描かれる舞台裏が見れたのは興味深かった。

2つのアリスの物語は大ヒットし、色々と商業化もされていく。
例えば壁紙やおもちゃなど。

ナーサリー版もルイス・キャロルによって出版され、ますますアリスの物語が生活に浸透してくる。

こうした絵の中でも、アリスの物語を読み聞かせており、いかに生活に密接しているかが分かる。
因みにこの子のお洋服もアリスみたいでめっちゃ可愛い。
ただ、ナーサリー版でようやく色が着いたのだが、それは我々が”アリス”と考えると思いつくこの水色ではなく、なんと黄色い服をアリスは着ている!びっくり!テニエルが着色したということなので、黄色のイメージだったのでしょう…

更には舞台化もされ、とても興味深いことに、ドジソンは2つのアリスを合体させることは反対しており、そのため午前中に”不思議の国”、午後に”鏡の国”と分けたらしい。
ディズニーのアリス、めっちゃ合体されていますけど、それは不本意だったということなのね…と思いつつ次の章へ。

第2章・第3章

ここから、映像化を皮切りに、アリスの物語がどのように時代時代で受け入れられていったのが語られていく。

アリスの物語が、いかに色んな解釈ができる余地があるのかがうかがい知れる章となっていて、例えば政治的なコンテキストで読み解いたり、はたまたシュールレアリスム的に読み解いたりと、後世の人がその時代に合った解釈をしているのが非常に興味深かった。

個人的に映像でいえば、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』がとても好きで、学生時代に何度も観た映像なので、とても懐かしく感じた。また観たくなる…

そしてディズニーのアニメもすごいな!と思った。あの時代のアニメにして、あのスピード感あふれる画面展開、そして流れるようなシークエンス…浜辺を走っていたら、岩がポットになってお茶会になったり、イモムシのおじさんの煙がトンネルのようになって扉に行きついたり…しびれる…
こちらもまた観たくなった。

インスタレーションの展示もあり、なかなかきれい。でも残念ながら誰の作品か分からず…(書いてあったのかもしれないけれども分からずで、出展一覧もないので分からず…)

第4章・第5章

アリスの物語はバレエやオペラまで舞台化され、ますます解釈の枠が広がっていく。

個人的にはティム・ウォーカーの黒人のみで表現したアリスの世界がとってもかっこよくて好きだった。
因みに、第1章の方にあった、1900年頃にスワヒリ語に翻訳された本は、挿絵の登場人物が黒人に差し替えられていた。元々そうした柔軟性があったものの、ディズニーをはじめとした映像によってイメージが固定化されたのかなと思ったり。

これで展覧会は終わるのだが、この頃には最初の方のアリスの展示が忘れてしまうくらい、ドジソンとテニエルで作ったアリスの世界からかけ離れてきている。それくらいアリスの物語の懐が広いということだろうか。

チラシ

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