骨を折りたたむってのが気持ち悪かった:和田竜 「忍びの国


「のぼうの城」が面白かったのもあって、「小太郎の左腕」をまたもやジャケ買いしてしまった。
でもその前に、と借りてきたのが和田竜氏2作目の「忍びの国」。

とは言いつつ、一回目に借りた時は興も乗らず、返却日が来てしまったのを理由に返してしまい、今回も借りたはいいけどずっと放置。ついには図書館から催促の電話が来てしまったのであわてて読み終えた。

結果は、うーん。前作の方が面白かったかな。
なんか話の流れが前作と似た感じだった為、先が読めてしまったし、その上、前作の方が人物に魅力があった気がする。

なにはともあれ、本作の内容はというと。
時は前作より遡り、織田信長が天下統一を目指して奔走する安土桃山時代。
織田信長の次男坊、信雄(ノブオと書いてノブカツというらしい)が伊賀攻めを行うお話。
(以下ネタバレあり)


お話の主人公となるのは、伊賀忍者の無門。
自他共に認める天下一の忍者である。
彼が唯一頭が上がらないのは、安芸の国からかっさらってきた女・お国。女房にしたいところだが、なかなかお国は首を縦に振ってくれない。

ところでその頃の伊賀は、地侍で構成されており、その下に忍者である下人がいる。
忍者である下人は、普段畑を耕す百姓で、小遣い稼ぎに忍者稼業を営む。
その地侍は普段はお互いに戦を繰り広げているが、十二家評定衆という議会みたいなもので、場合によっては結束されている。

今回の物語の主となった信雄の伊賀攻めは、この十二家評定衆が仕掛けた罠で、織田に勝つことによって、忍者の仕事でがっぽり儲けようという魂胆のものだった。
ところが実際に戦いの火ぶたが落とされると、がめつい忍者たちは一銭の得にもならないこの戦に見切りをつけて、ごっそり脱走してしまう。
その中に無門もいたのだが、武士の娘であったお国に機嫌の悪さに辟易して、一計を興じて皆を引き連れて引き返す。

それまで劣勢にいた伊賀方が、それによって形勢逆転。

ついには勝利を飾ることになる。

といったお話なのだが、どうにもこうにもこのお国ってのが解せない。

なんかつんつんしちゃってさ。
そしてもっと解せないのが無門。一体お国の何がいいの!?って感じ。

どうせならさっさと安芸の国に返しちゃって、新しい人を見つけりゃいいじゃん!って感じ。
いまいち無門がお国に惚れている(そもそも惚れているのか!?)理由がさっぱり分からないので、その点が感情移入できない。

よって無門が伊賀に引き返すところも、まぁ話の流れで帰るのは分かるけど腑に落ちない。
挙句の果てにはお国は死んじゃうし!
というように感情移入ができなかったので、怒涛のような展開の場面でも、気持ちがあっさりしちゃって「ふ~ん」ってな感じ。

忍者という人たちがいかに銭至上主義で、考えが一風変わっていて、モラルというものが全くなかったというのは面白かったけど……。

“そもそもなんで無門はお国のことが好きなのか”という、物語の中心ではなさそうな、そして単純なところが不明瞭だったせいで、この作品の面白みが減っているのが非常に残念。

ということで「小太郎の左腕」には非常に期待しておる次第です。


<和田竜 「忍びの国」 2008年 新潮社>

コメント

タイトルとURLをコピーしました