翻訳本みたいな文章だったので、日本人と知ってびっくりだった:飛浩隆 「廃園の天使I グラン・ヴァカンス」


本の交換会で「ストリート・キッズ」と交換してもらった「グラン・ヴァカンス」。
SFってなかなか読まないからいい機会、と思って読んでみたが、正直あまり面白くなかった…

舞台は仮想リゾート<数値海岸>の一区画<夏の区界>。
そこにはAIが住んでいて、外の人間はその世界の役を買って楽しむ、というのがこのリゾートのコンセプトとなっている。役というのは、例えばある家族の“父親”というのが空席になっていて(AIがいなくて)、その“父親”を買って、ある期間は父親として楽しむ、というものなのだ。

そして読んでいくうちに、ただ“父親”役をするというのではなく、それが性的な遊びというのがこのリゾートの目的のようだ(というか、確かにただの“父親”役を高いお金を払って誰が買うのか、という話だが)。

ところが、この世界にゲストが来なくなって1000年。
もちろんAI達は外がどうなったのか、そして何故この世界が存続しているのかさっぱりわからない。
それと同時に“視体”というものが出現して、それは上手く使えると色んな能力(人間で云えば超能力てきな)が発揮できるというものだった。

そんなこんなで、なんの代り映えのない日々が続いている中で、突然得体の知れない「蜘蛛」が世界を襲う。
蜘蛛は底なしの飢えを持っていて、区界をどんどん食い荒らしてしまう。

そこからAIと蜘蛛の攻防戦が始まるのだが、これがまた長い。というか話の大半はこれで占められていて、割とだらだとAI達の奮闘ぶりが描かれている。云い方を変えれば“丹念に”描かれているのだが、何せ、こちらとしては謎な部分多いので、短気な私としては早く答えを出して欲しい。なのにあまり進展のない戦いが延々と続く。しかも登場人物がやたら多くて、その一人一人の死にざまが細かく書かれていて“いらんやん!”と思ってしまう。

そしてやっと最後になっても、なんの感慨もわかない結末だった。

多分、シリーズとなっていて続きがあるのかもしれないが、そんなすっきりとした終わりでもなかったし。
でもこのままシリーズを読んでいくこともないな…
色々と残念な作品だった。


飛浩隆 「廃園の天使I グラン・ヴァカンス」 2006年 早川書房

コメント

タイトルとURLをコピーしました