三月うさぎはrabbitじゃない:恩田陸「三月は深き紅の淵を」

「ネバーランド」を読んでから、恩田陸は是非とも読みたい作家だったのですが、いかんせん、本が手に入らないところに長年いたので、日本に帰ってきた今、念願かなって恩田陸です。

わー すっげええーーー
というのが感想でした。「三月は深き紅の淵を」の。

これは「三月は深き紅の淵を」という、謎の本をめぐる話なのですが、この本(私たちが読んでいる本)自体も、本の中の本とオーバーラップしているのでした。

「三月は深き紅の淵を」というのは、謎の本で、作者も分からなければ、本の所有者もたった一晩しか貸してはいけない、という規制の強い本でした。

第一章に出てくる人たちの話をまとめると;

第一部「黒と茶の幻想―風の話」

四人の壮年の男女が旅をする話。道中、四人が色々な話をする。話に出てくる事件は、解決したり、未解決だったりする。

第二部「冬の湖―夜の話」

”失踪した恋人を、主人公の女性が恋人の親友と探す”話。登場人物いわく”夜の道を黙って静かに遠いところへ走っていく印象”らしい。

第三部「アイネ・クライネ・ナハムトジーク―血の話」

避暑地にて、少女が自分の生き別れになった腹違いの兄を探す話。四部の中で、一番きちんと解決している話。

第四部「鳩笛―時の話」

物語作家が小説を書いている、という設定の話で、小説家の頭の中に次々と出てくるイメージがまとまりなく描かれている。

これに呼応するように、この現実の本も第四部作になっていて、話も微妙に呼応している。そして、その四部とも、話が独立している(第三部を除いて、全てに「三月は~」が出てくるけれども)

第一部「待っている人々」

主人公が、上司の命で会長宅に行くと、そこには会長含め4人の壮年の男女がいる。そこで「三月は~」の存在を知らされ、この邸からその本を探せ、と言われる。

第二部「出雲夜想曲」

編集者の二人が夜行列車に乗って、出雲に行く話。それは、そのうちの一人が、「三月は~」の作者をつきとめた、と言って、出雲にその人が住んでいる、というので。

第三部「虹と雲と鳥と」

高校生二人が死んでしまったことから話が始まり、その周りの人がその死の真相をつきとめようとする。その中で、その二人は腹違いの姉妹だと分かる。

第四部「回転木馬」

どうやら、3つの話が同時進行している。そのうちの一つは、現実の「三月は~」の作者。もう一つは、その作者を第三者の目でみたもの(多分)。最後の一つは里瀬という子が、不思議な学校に来た話。

呼応している、というのは

第一部>壮年の男女4人が出てくる。話をしている(現実の本でも、「三月は~」が話の中心になって、それぞれの読書論が語られている)

第二部>どちらも、二人がどこかに行っている。本の中の本のほうは”夜を連想させる”話だそうだが、現実の本のなかでは、実際に夜に旅をしている

第三部>腹違いの兄弟を探す、という共通項がある。現実の本のほうでは、この章だけ「三月は~」の事が書かれていない

第四部>作者の視点が描かれている。そして、複数の事柄が(本の中の本では、現実と回想やらなにやら)入り乱れている、というのも共通項かも。

それにプラス、本の中の本のほうでは、柘榴がどの章にも出てくるらしいけれども、現実のほうは、小泉八雲が出てくる。これは、第四部の中で、作者が実際に言っているし、第四部の中の「彼女」も小泉八雲の展示会に行っている。

とまあ、複雑な極み!という感じだったけれども、本当に面白かった!最後が、いまいち理解できていないに違いないけど・・・。

この凝った作りだけではなくて、随所に見られる、読書考も楽しかった!

本日のお言葉は、読書考の一つでも、と思ったけれども、すでに長くなったので全然違うものを・・・;

第一部にて、会長が主人公に言う言葉
「鮫島巧一はそれらを自らの意思で選びとったのか?もしくは何者かによって選ばされたのか?それは神のみぞ知る領域であるが、君はそうやって、流れる時間と空間の中を死へと向かって最期の瞬間まで選び続けるわけだ。」

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