相変わらず人間描写が卓越しているなぁ:上橋菜穂子 「獣の奏者 I闘蛇編」


「守り人」シリーズを読んだ時に、日本人に生まれてこの本を読めて本当に良かった!と思えるくらい好きだったので、また新たなシリーズを読むのにはちょっと抵抗があった。だって面白くなかったらがっかりが何百倍もなると思うし。

しかし!そんなのは本当に杞憂に終わった!
何これ!面白すぎる!!!

主人公のエリンの母親は闘蛇衆の一人で、しかもその腕が良いことから、一番大きい“牙”と呼ばれる闘蛇を負かされている。

この闘蛇というものは、普段は水に住むが陸地に上がると竜みたいなもの、でも水に居る時は海蛇みたいなもの想像していいみたい。
本当は人間に慣れない獰猛な生き物だが、音無し笛を吹いて体を硬直させながら調教して、それに乗って軍を為すのが大公領の軍だった。

そもそも大公領とは、リョザ神王国の一部なのだが、このリョザ神王国というのは山の向こう、神が住むというところから神がやってきて人を統べたのがことの始まりだった。

武器も持たず、王の神性でのみ国を統治していたのだが、近隣諸国から攻め入られた時に、大公の祖先が人を殺すという汚れ役を買って出て、そこからリョザ神王国を守る役割があてがわれることになる。
そんな歴史を持つのだが、ある時、牙がすべて死んでしまうという事態が発生する。

大公の牙を死滅させたかどで、エリンの母親は死刑になってしまうのだが、なんとか母親を助けようと幼いエリンは闘蛇のいる池に落とされた母親めがけて泳いでいく。
もう間に合わないと思った母親は、指笛を吹いて闘蛇を言うことを聞かせ、幼いエリンを闘蛇に乗せて逃がすのだった。

実はエリンの母親こそ、霧の民と呼ばれる、王国に忠誠を持たない流れ者の一族だったのだ。
その一族は不思議な力を持っているとされ、王国の人々に忌み嫌われていた。

とだらだら書いていて気付いたが、この物語を簡単にまとめるなんて無理!
なぜなら総ての設定が好きすぎるから、落とすことなんてできない!

とりあえず、エリンは養蜂を営むジョウンに拾われて平安な日々を過ごすのだが、ひょんなことより別れなければならなくなり、エリンの才能と王獣への関心が相成って、王獣使い養成所みたいなところに入ることになる。

この王獣、姿こそ美しいのだが(キメラみたいな姿?)獰猛な闘蛇の天敵で、闘蛇をあっさり噛み殺してしまう。

その姿により、リョザ神王国に真王の象徴として、王国内で何頭も飼われている。
闘蛇と同じく人間に慣れない王獣は、闘蛇と同じく音無し笛で操作されながら飼われているのだが、その王獣が病気になったりした時に保護される場所・カザルム王獣保護場にエリンは入学することになるのだ。

そんな折に、真王に捧げられた幼獣が、真王暗殺(未遂に終わったが)に巻き込まれ怪我をして、カザルム王獣保護場にやってきたのがエリンの人生を大きく変えさせる。

実はエリン、珍しいことに野生の王獣を見たことがあったのだ。
その経験を見込まれて幼獣の世話を任されたのだった。というのは、幼獣・リランは大変怯えていて、餌をまったく食べなくなってしまっていたのだ。

というところで一巻は終わる。

あまりに面白くて、一気読みしてしまった。二巻も実は一気読み済みなのだが、三巻をさっそく買いに行こうと思う。


上橋菜穂子 「獣の奏者 I闘蛇編」 2009年 講談社

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