前に読んだ三浦しをんさんのエッセイに紹介されていたので、「リアルワールド」by桐野夏生を読みました。
桐野夏生作品は、ミロシリーズの二作しか読んだことがなかったのですが、「リアルワールド」を読んで、やっぱりこの人は人の心の闇というか、人の弱い部分とかを描くのがうまいなあ、と思ってしまいました。
なんというか、ミロにしろ、「リアルワールド」に出てくる女子高生にしろ、言い方が悪いけれども、すねに傷を持つ人が多くて、その傷が大なり小なりその人たちは、それを抱えて生きていこうとしていて、そいうのがうまく描かれているような気がしてなりませんでした。
話は、女子高生である山中十四子(トシコ)の隣人の少年(ミミズ)が、母親を殺して逃亡するのを、十四子をはじめとする、十四子の友達たちがなんらかの形で関与していき、結局逃亡を助ける形となっていく。各章で主人公は変わり、それぞれなぜミミズと関与していくのか、というのが克明に描かれていました。
結果的に外の者から見ると、十四子の元へ訪ねてきた女性刑事の言葉のように
「あなたたち仲良しグループは、隣の少年が逃げているのを知っていて、皆で応援していたのではないかと。それを寺内さんが知って、怒って通報し、思いがけない事故で東山さんが亡くなられたので、責任を感じて寺内さんは自殺した」
というような事件だったけれども(もちろん詳細は少し違うけれども)、その事件に関与した人にとっては、全く違った様相を成していて、それは十四子が
「あたしは唖然としていた。他人の口から語られると、実にアホらしい話だった。だからこそ、あたしは嘘を吐かなくてはならない。あたし自信を守るのではなく、多分、ミミズのことを聞いた時に感じたあたしたちの真実みたいなものを。あるいは、ミミズが母親を殺してしまった瞬間のようなものを。それは誰にもわかならいものだから。」
というものに表れているわけで。
そういう感覚は、実際に高校生の時に、必ず一回は体験しているように思う。傍から、というか大人から見ると、実に些細なことなんだけれども、当事者達にとっては、本当に重要なことだという。
そして、この「リアルワールド」に描かれている“事件”のようなものは、母親殺しの部分は差し置いて(大体母親殺しのシーンは実に短い)、すごく客観的に見ると大した事じゃない。
でも、十四子が女性刑事にそれを指摘されて、ああ思うシーンで、そうだそうだと妙に納得させられたのは、作者が丹念に、各章で主人公を変えながら、その人物達の心情を丁寧に書いていたからだと思ったのでした。
まあ つまりは、短く言うと、すっっっっっっごく面白かった!!!
最後はダーーーーッと息もつかず、結末には十四子のように、ものすごくショックを受けてしまった。
あー 面白かった! 他の桐野夏生作品が読みたい!
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