やっぱり表紙絵がいい!:ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇2 生霊わたり」


“クロニクル千古の闇”シリーズ2巻目。
1巻を読み終わった時は、なんとなく“続きが気になる!すぐさま2巻読みたい!”という気にならなかったのだが、読み始めるとぐいぐい引き込まれて一気に読み終わった。

正直先が読める部分があることはあるのだが、やはり狩猟民族の生活は非常に興味深く、特に氏族によって習わしや考え方が違うという描写が面白かった。

1巻では熊を倒したトラクだがその時にウルフとは別れ、トラク自信はワタリガラス族に身を寄せていた。
悪霊に取りつかれた熊は、“魂食らい”という魔術師一団の内の誰かに創られ、しかもトラクの父親を狙って創られた、というところまでは1巻で分かっている。

その“魂食らい”というのは7人いて、元々は人々を救う為にいたのだが、権力欲に溺れてしまった。その後大きな火事に見舞われてちりぢりになってしまった、というところまでも分かっているのだが、では一体誰なのか?という肝心なところは分かっていなかった。

2巻ではワタリガラス族に病が発生するところから始まる。
どうやら他の氏族でも似たような病が発生しているらしい。

氏族に縛られていない自分にしか病を治す薬を探しに行ける人はいない、というトラクに、ワタリガラス族長フィン=ケディンは“魂食らい”がトラクをおびき寄せる罠なのではないかと止めるが、ワタリガラス族を抜けてトラクは一人探求の旅に出かけるのだ。

紆余曲折を得て、海に住む氏族・アザラシ族がその薬を知っていると聞いて、森を出て海に出るのだが、あまりに無知なトラクはすぐに捕まってしまう。

が、レンが後から追いかけてきたり、ウルフが戻ってきたりなどなどして、三人はやっと合流するのだった。
(ここからネタばれ)


結局、病と言っていたのは病ではなく、“魂食らい”がビャクシンの実に毒を塗りつけていただけだった。
それも“トコロス”と呼ばれる、悪霊を宿らせた手下を使って。

そしてその“魂食らい”こそが悪霊の熊を創った者と同じで、なんとアザラシ族の魔術師だった。
しかも、その魔術師はトラクの父親の兄で、しかもしかもトラクの父親は七人目の“魂食らい”だったのだ。

父親は“魂食らい”が権力を握ろうとしているのを知って逃げだしたので、兄に殺されたという訳だ。
まぁ最後の父親が“魂食らい”というのは容易に想像できるのだが、この本の魅力の一つは独特の表現方法だと思う。

例えば

 ウルフは二つの<闇>と<光>の間、走り続けた。尻尾を山側に向け、<熱いまぶしい目>が眠るときに沈む方をめざして走った。
 恐怖が後足をつかもうと、追いかけてきた。

(p73)

とか最後の一文の表現方法も好きだし、ウルフから見た、“一日”や“太陽”の表現方法もよく練ってある。
英語ではどう書かれているのかちょっと気になった。


ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇2 生霊わたり」 さくまゆみこ・訳 2006年 評論社

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