暑い日に極寒の本を読むと、ちょっとは涼しくなる…?:ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇3 魂食らい」


さくさく読み進めている“千古の闇”シリーズ。何せ3時間くらいで読める。その割にディテールが濃い気がする。

本作の「魂食らい」では、残りの4人の魂食らいが出てきた。

ウルフが罠にかかって魂食らいに捕まってしまうところから話が始まる。
レンがワタリガラス族に助けを求めよう、というのを聞かずにトラクが助けに行こうとするので、レンと二人だけの旅が始まる。
しかも今回は北へ北へと向かい、氷河の方へと行くことになる。

ところがトラクもレンも、森の知識があっても氷河地帯の知識はない。
シロギツネ族に見つかり保護され南に帰されそうになるところを、事情を知ったシロギツネ族の人がそっと逃がしてくれる。しかもしっかりとした用意を持たせてくれて。

ということで、人間関係のはらはらはなく話は進む。
ただ北の厳しい自然がトラク達の前に立ちはだかる。

やっとのことで魂食らいに辿り着くのだが、彼らがやろうとしていことは、狩る動物を殺して悪霊を呼び出す、ということだった。
なんとかそれを阻止し、ワタリガラス族に帰ってこれたのだが、トラクは魂食らいに彼らの印を刺青を入れられていた…というところで終わる。

あとがきを読むと、作者はグリーンランドなどに行って実際にイヌイットに取材を行ったようなのだが、確かに非常にリアルだった。
アザラシを狩るシーンなんてこんな感じだった;

 イヌクティルクはそりからトナカイの皮を一枚おろし、穴の風下に、毛の生えている側を下にしておいた。
「おれの靴音を消すためさ。シロクマの足裏には、毛が生えているものな」それからイヌクティルクは、ハクチョウの羽を穴の上にのせた。「アザラシは顔を出す前に、息を吐く、そうすると羽が動くんだよ。その一瞬がチャンスだ。アザラシは、ちょっとの間息を吸うだけで、また潜ってしまうからな」

(p121)

とりあえずこのシリーズの魅力は、色んな氏族の営みのディーテール(これが非常にバラエティに富んでいる)に、ウルフのかわいい+かっこよさだと思う。


ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇3 魂食らい」 さくまゆみこ・訳 2007年 評論社

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