去年、本屋で山積みになっている本を読んだら割と面白くて、図書館で借りようと思いつつ、タイトルを書きとめるものがなくて、まぁでも黄色い表紙だし、また今度本屋で見つけて書きとめよう、と思っている内にいつの間にか目にとまらなくなり…
慌てて探しまくった黄色い表紙の本、それが「トッカン」だった。
私の直感が正しかったのか分からないけれども、続編が出るほどの人気のようだ。
読んでみたら、さらっと読めて“ザ・エンターテイメント本”だった。
ちょっとしんみりな部分も笑えるくらいお約束で、ある意味安心して読める本だった。
題材が“トッカン”と呼ばれる特別国税徴収官、という他にはお目に書かれない題材で、ここだけが新鮮と言えるだろうか。
公務員+税金を徴収する、ということで、世間様の嫌われ者の役なのだが、その苦悩やドラマが軽いタッチで描かれている。
お約束にも主人公は下っ端の女の子:鈴宮深樹(あだ名はぐー子)、突出しているわけでもないのに、国税局からお越しの特別国税徴収官(トッカン)の補佐に選ばれる。
そんでもってお約束なことに、このトッカン・鏡雅愛は冷血無比で、口がとんでもなく悪ければ謎も多い。でも実は…という設定が、またもや笑ってしまうくらいお約束。
まあしかし、こんなお約束でも、こういうキャラには弱いんだなぁ~。しかも過去に何かある、と匂わせられているキャラとなると…。
キャラだけでなく、内容として面白かったのは、ちょっとしたミステリ仕立てになっているところ。
税の徴収とミステリの融合となるとなかなか斬新かもしれない。つまり謎とは、「なぜ税を払わないのか?」というところになる。
もちろん貧乏なところは何の疑問にもならないのだが、外車などがごろごろしているのに…となると、明らかに脱税の疑惑がある。でも申告書を見ると、申告されている税額が正しい。ではどこでちょろまかしているのか?というところが謎となるのだ。
本書ではコーヒー店と、銀座のクラブが舞台となっていた。
コーヒー店はサワリのようなもので、銀座のグラブがメインとなっている。その1件で、ぐー子ははめられたりなどの紆余曲折を経て自己嫌悪に落ちまくって、最後には謎を解明し救われる、という流れになっている。
何度も言うが、それが非常に軽いので読みやすい。
文章もなかなか今風というか;
(な―!)
(p165)
なななななな。とわたしの脳がバグり始めた。あれだ、キーボードを押しっぱなしにしたワープロ文章のように、画面いっぱいに“な”の字が増殖していく。な、なんだ、このシチュエーションは。
なんて、私的になかなか新しい。
というわけで、内容が濃いわけではないけれど、エンターテイメントとして楽しめたの満足である。
高殿円 「トッカン―特別国税徴収官」 2010年 早川書房
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