そういえば絶叫って聞いたことないかも:有栖川有栖「絶叫城殺人事件」

予約している「女王国の城」がまだ来ないので、代わりに借りた有栖川有栖本「絶叫城殺人事件」

全然短編だとは知らずに借りてしまったので、短編と気づいた時のがっかり感・・・ 私、やっぱり短編好きじゃないなー 特に推理小説では。
やっぱり長編に比べて、からくりとか仕掛けが大きくないし、その結果、事件が解決されても、おおお~感が少ない・・・

あとやっぱり、なんか火村&アリスコンビよりも、江神&アリスシリーズの方が好きかも・・・
なんというか、火村さんにどうしても、どーしても百パーセント好きになれない・・・ なんか、ちょいと火村さんの方が冷たい気がするし、ちょっと何を考えているのか分からない感じだし、あとアリスの位置が、火村さんとだと大分下になるけど、江神さんとだとそこまで差がないと思う。

その火村さんがちょっと冷たい感じがする、というのは、やっぱり火村さんが標準語をしゃべる人ってのもあるのかも、と今回思いました。もちろん、ほとんどの本の中の探偵は標準語をしゃべるんだけど、なんというか、助手が関西弁をしゃべり、探偵が標準語をしゃべるとなると、標準語の冷たい感じが際立ってしまう気がするのでした。ま、きのせいかもしれないけど。

収録作品は;

  • 黒鳥亭殺人事件
  • 壷中庵殺人事件
  • 月宮殿殺人事件
  • 雪華楼殺人事件
  • 紅雨荘殺人事件
  • 絶叫城殺人事件

全部“殺人事件”とつくのはさりことながら、二文字の感じ後につく、館を表す漢字が全て違うっていうのが、細かいところまでこだわる有栖川有栖っぽいな、と思いました。

この中で、一番面白かったのは「黒鳥亭殺人事件」かな。人里離れた館、父親・娘二人で住んでいる、曰くありげな館、と私の好きなアイテムが目白押し。あと、事件のあらましを話す父親とそれを聞く火村先生、その話から気をそらせる為に娘(まだ小学校前)に“20の扉”のゲームをするアリスと娘、というごちゃごちゃした会話文の形式も、なんか面白かった。

館として、一番好きだったのはやはり、紅雨荘。情緒のありそうな館で、屋根も赤ければ、館を取り囲む木々が秋になると赤くなる、という設定がいい・・・ウットリ

そして最後の「絶叫城殺人事件」で、犯人が分かったのでうれしかったのでした。

「絶叫城殺人事件」にて、猟奇的ゲームが人に与える影響について、ゲーム製作者が語った言葉が、確かに火村先生や警部補が言うように“詭弁”かもしれなかったけれども、面白かったので引用;

われわれはグロテスクな描写をただ羅列しているのではなく、きちんと昇華させて作品化しているという自負を持っています。殺人シーンが多いというだけで非難されるのなら、テレビで時代劇を放映するのもただちに中止しなくてはならない。NHKの『芸術劇場』でオペラの『サロメ』を流すのも不可だ。われわれのゲームには、血が滴る生首を欲しがる女なんて登場しませんからね。歌舞伎の<殺し場>もまずい。
 時代劇や歌舞伎は様式化されてるからいい?それは変でしょう。われわれの作品だって、充分に様式化されていますよ。ゲームに馴染みのない人の目で判定されては困ります。芸術作品のオペラと同一に論じるのはおこがましいかもしれませんが、いずれも一個の完成された表現であることは変わりがありません。 …(中略)…
…。ホラービデオや『サロメ』を観て殺人鬼になる奴もいる、なんて心配していたら、社会のすべての基準を最低の愚か者に合わせる必要が出てくるんですよ。はたして、最低の愚か者のための社会を築きたいと希う人がいるでしょうか?

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