本の装丁も素敵:小野不由美「くらのかみ」

ミステリーランドを読もう!企画;第三弾「くらのかみ」by小野不由美です。どうやら、これがこのシリーズにおいて、初回配布本だったみたいですが。

ここで声を大にして言いたい。

面白かったぁぁぁあああああああああああ!!!!

正直言って、その前に読んだ二作は本当に、「大人向けの小説を書いている作家が、子供用に書いた」感がぷんぷんするものだったのですが、この「くらのかみ」はそういう、言葉は悪いけどわざとらしさがなく、純粋に作品自体が非常に面白かったです。

もしかしたらそれは、小野不由美の作品の中で、わりと登場人物の年齢が低めであることも起因しているかもしれません。

有栖川有栖や高田崇史も登場人物は大人だったり、大学生だったりするのに対して、小野不由美の登場人物の中には、高校生とか子供(十二国旗の泰麒とか)がいたりするし。そういう意味で、他の両氏よりも慣れていたのかもしれませんが・・・

お話は、あの「四人が四隅に立ち、一人づつ壁伝えにもう一隅に行き、そこに立っている人にタッチしてから、その人も同じようにする。後から考えると、それは四人ではできないゲームで、あとのもう一人は誰だったのか?!」という怪談話を実践してみよう!と子供たち四人が倉でそれをするところから始まります。

そして、ゲームが終わってみて、一人多いことに気付きます。座敷童子がこの中にいる!ってことなわけです。

漫画「11人がいる!」も面白かったけれども、これも面白かった!しかも、その一人を探す話ではなくて、ちゃんと(?)事件もあり、その事件も一筋縄ではいかない(犯人が二組いる)わけです。

そして大元となる事件が、この「一人増えてしまった」ということがミソとなって解かれていくわけです(ちなみに、他の大人たちやそのゲームに参加していなかった子供は、一人増えたことに気付いていないし、その増えた一人というのも、“誰かの子供”として存在していることになる)

そんなわけで、大満足な「くらのかみ」でした。

装丁も、緑で統一していて(登場人物がまとめたメモも緑の字)、実は、正直なところあんまり好きでない挿絵画家の村上勉さんの絵も、きれいな緑が映えてよかったです。そして気付いたのが、確かに、村上勉さんって緑の使い方がきれいだよなあーということでした。

そんなわけで、今回の文は、「一人増えてしまった」要素が存分に生かされる謎解明の直前文です;

「ちょっと目を離したはずだよ。でないと、師匠しか、」と、禅が言いかけたとき、「ちがう。」と、 耕介がつぶやいた。
「ちがうって、なにが?」
「他にも犯人がいていいんだ。」
「え?」
「忘れたの?子どもはひとり、多いんだよ(ここに傍点)。」
 子どもたちは、全員がぽかんとした。
「ひとり、多い・・・・・・」
 禅はつぶやいた。
「ぼくらの親の中の誰かは、本当は子どもなんて持ってない。」
 なんだかすっかり慣れてしまって、六人いるのが当たり前になっていたけど。
 耕介が言うと、梨花があらためて全員を見まわした。
「いったい、誰が座敷童子なの?」
ここで、この章は終わるのですが、うまい!!

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