トラクもレンも大きくなった:ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇4 追放されしもの」


読み始めると一気に読めるのに、なかなか読み始めない“クロニクル千古の闇”シリーズ。なんでだろうな。
面白いと分かっているのだけど…

魂食らいの刺青をつけられてしまったトラク。
レンにもフィン=ケディンにも言えずに悶々としていたのだが、ついにイノシシ族に見つかってしまう。

突然のことでフィン=ケディンも助けてやることもできず、掟に従って“ハズシ”にされてしまう。
“ハズシ”とは、死者として扱われ、見付けた人は殺していいことになっている。
ハズシの刺青を額に入れられたトラクは、ウルフと一緒に逃げることになるのだが、魂の病にかかってしまってウルフの言葉も理解できなくなる。それどころかウルフを追いやってしまうのだった。

それは魂食らいの一人、セシュルが噛んでいることはおいおい分かってくるのだが。

ハズシと関わる人も死罪となる思い掟なのだが、レンが黙っていられない。
トラクの母方の血族であるベイルと共にトラクを追いかけていく。
トラクが魂の病にかかったことに気付いたレンは、術を使ってワタリガラスをトラクへ寄こす。
実際、ウルフの言葉どころか森の知識もすべてなくなっていたトラクを助けたのは、2羽の子どものワタリガラスだった。

魂の病から治ったトラクは、ウルフと再会を果たす。
ところが喜んでいられるのも束の間、セシュルに捕まったしまう。
セシュルは3かけらの内、残っているはずのファイアオパールの一かけらをトラクが知っているの睨んでいる。

なんとかセシュルから逃げて、しかもレンとベイルに合流できたのだが、そこでセシュルはレンの秘密を暴露してしまう。というのは、セシュルこそがレンの母親だというのだ!

それで決裂してしまうレンとトラク。
ベイルによってレンと仲直りをしようとするのだが、その時にトラクの父親のナイフにファイアオパールの一かけらが入っていることを知る。

最後はセシュルを殺しファイアオパールを砕く(ファイアオパールを砕くには生き物を犠牲にしなくてはいけない)。
フィン=ケディンがトラクを養い子にした為、トラクはハズシから解かれるのだった。
めでたしめでたし、といった感じなのだが、ウルフがオオカミの群れから離れてしまう寂しさが伝わって可哀想だった。

ウルフにとってはトラクは群れの兄貴。子どもの自分を育ててくれて、子どもの時に歩けなくなった時、抱えてくれたことを思い出すシーンはしみじみとした。

でもオオカミは必ず一つの群れしか持てない。ウルフとトラクが別れてしまうのは寂しいけれども、ウルフが本来の自分の群れに入れない、というのはなんだか切なかった。
今まではトラク自信も人間の群れには入れていなかったので同等というイメージだったのに、本書でトラクはフィン=ケディンの養い子になる。

その事実がウルフの哀れさを出しているような気がした。


ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇4 追放されしもの」 さくまゆみこ・訳 2008年 評論社

コメント

タイトルとURLをコピーしました