次から次へと氏族をよく思いつくよな:ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇5 復讐の誓い」


珍しく間髪いれずに読んだ「クロニクル千古の闇」シリーズ。

今回も初めて出てくる氏族などが出てきて面白かったが、何よりもウルフとの関係に劇的な変化が出て、途中が切なかったりした。

世の中が不穏になるっているので、アザラシ族と共同でアザラシ族を見張っているトラク達。
その晩は、ベイルとトラクが見張り役だったのだが、ちょっとしたことで二人は諍いを起こし、トラクは一人で離れた所で一晩を過ごす。

すると、ファイアーオパールを探しにやってきた<魂食らい>のシアジによってベイルは殺されてしまったのだった。
トラクはベイルの復讐を誓って旅に出るのだった。そうしてレンとウルフと3人の旅が始まるのだった。

今回の舞台は深い深い森の中。
オースロックス族、モリウマ族、オオヤマネコ族、コウモリ族、アカシカ族が住む。
奇妙な氏族たちで、特にオースロックス族とモリウマ族が戦っているので、ますます不気味な雰囲気になっている。

その戦い自体がシアジの仕業で、まぁいつもの通り、トラク達が倒して終わりなのだが。

今回のテーマとなっている“復讐”のために、途中でウルフが去ってしまうシーンが切なかった。

狩りをするわけでもないのに殺す、という復讐の気持ちがまったく分からないウルフ。突然、トラクがオオカミでないことに気付くのだ;

<背高尻尾なし>は後足で立ち上がると、とまどったような顔でウルフの方へ歩いてきた。
[どうしてこっちに来ないんだ?]
 その顔……。
 ウルフは最初から、平らで毛のない兄貴の顔が好きだった。でも、<闇>の中で見上げるその顔はオオカミとずいぶんとちがtった。<背高尻尾なし>の目も、オオカミの目とちがって、<明るい白い目>の光を投げ返してはいない
 [オオカミにはとても見えない]
 多くの<光>と<闇>の間つきまとっていたその思いが、倒木のようにウルフをおしつぶした。<背高尻尾なし>はオオカミじゃない!
…(中略)…
 [知ってると思ってたよ]トラクは、オオカミ語で言った。
 ウルフはあとずさった。琥珀色の目が、苦痛にくもっている。
 ああ、ウルフ。知ってると思ってたのに。
 ウルフは哀れな声を上げながら、尻尾を巻いて逃げ出した。

(p329-331)

ウルフ~~~!と思っていたら、雌とも会ってしまうし、もうこのままさよなら?と心配していたら、それは杞憂に終わり、ウルフはトラクの元に戻るのだった。

しかも子供も生まれ、トラクの群れには雌の<黒い毛>と3匹の子供が増えることになるのだった。


ミシェル・ペイヴァ― 「クロニクル千古の闇5 復讐の誓い」 さくまゆみこ・訳 2009年 評論社

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