時はめぐるめぐる:恩田陸「ライオンハート」

「ネバーランド」のような、読みやすい恩田陸を求め、手に取ったのが「ライオンハート」でした。ま、あらすじをちゃんと調べて読まなかった自分が悪いのですが、全然読みやすくなかったです!でもほら、「ネバーランド」と「ライオンハート」、なんか似たようなタイトルでしょ。

読了後の“?”の数としては、前のやつよりは、少なかったけれども、すらすら読める類のものではなかったです。何せ、時空を超えた、愛の物語(?)てな感じなんです。

エリザベスとエドワード。お互いに夢を見ながら、恋焦がれるのだけれども、会えるのは、ほんの一瞬。その夢というのが、その前のエリザベスとエドワードの出会った記憶だったりするわけです。

その何組かのエリザベスとエドワードの話で構成されている一冊なわけです。

その構成で面白いのが、なぜエリザベスとエドワードなのか、なぜめぐりめぐるのか、という謎が、最後にあかされるのではなく、途中であかされること。謎を劇的にあかすのではなく、それが淡々感を出すというか、らしさを出しているのではないかと思ったのです。

あと、各章の表紙になっている絵が、その話に関与している、というのも面白かったです。

たった一瞬しか会えないエリザベスとエドワードだけれども、一組だけ、一緒になったエリザベスとエドワードがいるのです。その一組も、エリザベスの方が記憶喪失だったので、歳をとってから知るのですが。その時の、エドワードの言葉が

「ついに、私のエリザベスに会う。
 老いてはいたが、やはり彼女は美しかった。
 そして理解した。
 魂は全てを凌駕する。時はつねに我々の内側にある。
 命は未来の果実であり、過去への葦舟である。」

で、それをその孫(また違う組のエドワード)が見るのです。ちなみに、その孫の話の方が先で、この言葉も先に出てくるのです。

一番好きな話は、エジプトの話でした。話の大筋は、エリザベスとエドワードの話ではなくて、妻を殺した犯人を追ってやってきた老人の話になっています。老人が目星をつけていた犯人こそが、エドワードだったわけです。そのエドワードとエリザベスの会う場面が、なんか感動的で好きでした。

その話の中に出てきた、紋章のお話が面白かったのでメモメモ。イギリスと日本の紋章について話しています(ちなみに話し手はイギリス人)。

「…(中略)…あたしたちとは省略のしかたが全然違うの。あそこもかなり歴史の古い国だそうだから。ただ、日本の紋章は家を単位に決まっていて、未来永劫子供も孫も同じデザインを使い続けるそうよ。イギリスの場合は、個人個人で少しずつ縁取りを付けたり、模様の一部を変えたりして常に変わり続けていくから、その辺りは違うわね」
「へええ。遠い未来にイギリスお受けとミカドの子孫が一緒になったらどうなるんだろう」
…(中略)…
「そうね。王家の紋章に日本の家紋が入る日が来るかもしれない」(p156)

この会話が成されたのは、大分昔の設定ですが、これが起こるかもしれない可能性は、未だにある、というのが面白い。

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