待望の「女王国の城」が手に入りました!!うれしすぎて小躍りしましたよ。なにせ、江神さんシリーズですよ!!やっと図書館から回ってきたのでした。
「双頭の悪魔」が出てから早15年経ったようです。そして本の中でも、ほんのちょび~っと時間が経っていました。モチさん・信長さんコンビは就活にあけくれ、江神さんは大学生活8年目を迎えてしまったため、最後の一年となってしまっていました。
そんな江神さんがいなくなってしまった、というところから話が始まります。江神さんの部屋を見る限り、その頃はやりだした新興宗教、人類協会の本拠地、神倉に行った模様です。その宗教というのが、宇宙人を崇め奉るもので、新しい教主はまだうら若い女の子。まあ、江神さん大丈夫か!?ということで、後輩どもは神倉に馳せ参じるわけです。ところがその神倉に着いても、その人類協会の建物(そこ自体が街みたいになっている)の中に入ることもできず、策を案じて江神さんとコンタクトをとってみたら、SOSを含ませる返事が・・・・。
結局中に入って、江神さんと合流することができるのですが、そこで殺人事件がおきるわけです。ところが、協会側は警察に通報することもしません。当然、江神さん一向ともう二人が閉じ込められることと相成ります。そんな中、第二、第三と殺人が続くのです。
凝ったトリックが登場して、ほお~ということはなく、犯人の動機も結構軽い印象を受けました。でもやっぱり面白かった。出るに出られない状態。決死の覚悟で脱走しても、その村一帯が教団の味方のようですぐ捕まるし。とにかく怪しい教団。江神さん一向の捜査に協力するふうでも、肝心なところは隠したまま。あと二日待って欲しい、とことごとく言われ、その二日後に何があるのか。などなど。
そんな謎も、事件の解決と、あと提示されていなかった事件の解決をもって、すっきりと晴れていくのです。ついでに江神さんが神倉にやってきた理由というのも、最後に出てきます。
そしてやっぱり、モチさん・信長さんコンビがよかった!実は江神さんシリーズの方が、火村さんシリーズよりも好きというのは、もちろん江神さんが好き、というのもありますが、このコンビがいるからだったりします。いるだけで場面が明るくなる存在というのは、推理小説の中でも結構珍しいのではないかと。
あとは何が何でも、読者への挑戦が入ってるのがしびれますね。せっかちなので、何度も熟読して挑戦を受けよう!とはならないのですが…。なのにあるだけでウキウキするとは、変な心理状態です。ということで読者への挑戦;
この物語がすべて現実の出来事だったならば、揺るぎない論理と動かぬ証拠をもって真犯人を指摘することはまず不可能だろう。警察による科学的な鑑定がなされておらず、独特の信仰を持つ人々(しかも、明らかに何かを隠している)の思考は窺い知れないため、第九章でマリアが嘆いたとおり「土台なしで家を建てるようなもの」だ。
しかし、それでも――事件を振り返り、土肥憲作、弘岡繁弥、子母沢尊人を殺害した犯人が誰なのか推理していただきたい。
随分と気弱な挑戦状だ、と苦笑されるかもしれないが、本格ミステリとは<最善を尽くした探偵>の記録だ。江神二郎の推理こそ、この物語を完結される唯一の解答である。
ご安心いただくために、威勢よく言い直そう。
論理の糸の一端は読者の眼前にあり、それを手繰った先に、犯人は独りで立っている。作者が求める解答は、その名前と推理の過程だ。
そんな江神さんシリーズ、五作で終わりらしいです。ということは、あと一作… うううう…… その頃は先輩方は卒業しているのでしょうか…
(女王国の城 有栖川有栖 東京創元社 2007年)
コメント