いまだに「上と外」の意味が分からない:恩田陸「上と外 4神々と死者の迷宮(下)」

今回も次巻が大変気になるところで終わった。
タイムリーに読んでたら新刊の発売が待ち遠しかっただろうな。というか、図書館で一気に全巻借りてきてよかったよ。

さてついに『成人式』がスタートする。
夜中のうちに配られた石を『祈りの部屋』にある壺に入れる、という作業をしなくてはいけない。そして同じ空間にはジャガーが徘徊している。
一晩のノルマは10個。戻ってきた時にいくつ石が残っているかで明暗が分かれるのだった。

もちろん練も必死で『祈りの部屋』を探すのだが、まだノルマに達していない内に“王”であるジャガーに出会ってしまう。すっかり身をすくませてしまった練。時間が刻刻と過ぎていく。
挙句の果てには寝てしまっていたようで、気付いたら点呼の時間まで間もないのに、ノルマは全然達していない。パニックに陥る練。

さて点呼の時間になり、ニコは皆を呼ぶが練が一向に現れない。
練の名前を連呼するところで、実質この巻は終わっている。

同時進行で千華子と賢・千鶴子の話が入るのだが、まずは千華子。
熱が下がり自分が閉じ込められていることに気付く千華子。とりあえずニコからは三日間待ってほしいと言われていたので、三日待つつもりでいたのだが、抜け道への隠し扉があることに気付く。
そうなると出てみたくなって出てみると、そこは巨大な地下回廊であった。
目印にオセロの駒を置きながら進むのだが、突然水が流れてきてあっさり流されてしまう。
ということはオセロの駒も流されてしまうということで。
千華子はあっさり、巨大地下回廊での迷子となってしまったのだった。

子供二人よりもハッピーに進むのが賢・千鶴子。
前巻で衝突しそうになった車は、なんと賢たちを探している車だったのだ。
というのも、町工場の社長をやっている賢の父親(練が預けられているところ)が、自分の伝手を使って呼びかけていたのだ。

実はここのシーンがなかなか良い。
賢の父親は政府の要請で長年技術指導をしていたのだった。それで大変お世話になった人たちが動いて、ついには政府まで動かして賢たちを探しに来た、というのがなかなかの感動シーンである。
この技術指導という解説のところが、国際援助についてさらりと書いていたので、抜粋してみる;

技術支援というと新しい技術、新しい機械をそっくりそのまま移植することだという考えは、今ではもう時代遅れのものになっているが、目に見える援助としてはその方が簡単なので、どうしても支援というとそちらに流れてしまいがちだ。…
 本当にその国の産業が振興するようにするためには、技術の裾野を広げる必要がある。突出した技術者が一人いるよりも、そこそこの技術者が百人いる方がずっといい。…技術さえあればいいというものでもない。技術を生産、販売に結び付け、最終的には国全体でその産業の恩恵を受けられるようになることが肝心だ。…だが、それは高い機械を買ってあげるよりも遥かに難しく、手間が掛かる割には成果の見えにくい作業だ。(p58)

薄い本の割に、こうやってバックグラウンドがしっかりしてるから読み応えがあるんだろうな、と思った。


恩田陸 「上と外 4神々と死者の迷宮(下)」 平成13年 幻冬舎

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