ニコってブラジル出身なのにポルトガル語しゃべるシーンが全然ないな:恩田陸「上と外 6みんなの国」

いやぁ~面白かった!
本当にハリウッド映画のように、出会ったかと思ったら離ればなれになってしまい…という繰り返しで、アドベンチャー感満載だった。

ただ難点を言えば、やっぱり最後が尻つぼみなような気がしてならない。
ちょっと投げやりになってしまったような…。
確かに最後の“めでたしめでたし”の部分は、今迄の調子で書いていくと冗長になってしまうかもしれない。
でもそれにしてはあっさりしすぎてないか?
なんかダイジェスト版って感じだったし。

最後の最後のオチは、お約束といえばお約束だったけれども、“ハリウッド的~”と思って楽しんでいる私としては、結構アリだった。



練とニコが地下回廊で千華子を探している時に、イザベラ山が噴火してしまう。
ニコは“この地下回廊が危ない”と言う。なんでも、溶岩がこの回廊に流れるように設計されているというのだ。
もちろん、危ないからと言って千華子の捜索を止めることはできない。
が、ニコとしては他の少年たちの保護という役目もあるし、「成人式」が終わったので迎えのヘリがやってくるのもあり、練は一人で探すことにする。

なんとか練と千華子は出会うことができたのだが、そこで練は、ニコとの別れ際に地図をもらわなかったことを思い出す。
幸いなことに天井には外が見える。
千華子を肩車して外へ出し、千華子が練を引っ張り上げる作戦に出るのだが、練を引っ張りあげるものを探している内に、またもや水が流れてきて練はあっさりと流されてしまう。
絶望した千華子だが、やがて奇妙な風船を見つけるのだった。

一方練は、ニコと別れた場所に流される。
するとニコが矢印を書いていてくれ、それに向って歩くとニコと合流することができたのだった。
ということでハッピーエンドはもう約束されたもの。
千華子が千鶴子達に助けられ、練はニコたちと軍に助けられ、というところまで丁寧に書いてあって、あとはあっさり。
もうちょっと、練と賢・千鶴子・千華子が出会うシーンを書いてくれればな~と思いつつも、帰国して練とじいちゃんが出会うシーンは感動的だった;

「じいちゃん、俺、ずっとじいちゃんだったらどうするかなって、ずっとそればっか考えてて、じいちゃんだったら」
 自分でも何を言っているのかよく分からなかった。最後の方は涙声になってしまって、なんだか全然分からなかった。
「よく帰ってきた」
 じいちゃんはそれだけ言ってくれた。
 うん、うん。帰ってきたよ。じいちゃんのお陰だよ。
 練は何度も一人で頷いていた。
 自分は祖父に、「ありがとう」と言いたかったのだと、ずっと後になって気が付いた。(p200)

じいちゃん、おいしいとこ取りだな!
久しぶりの恩田陸、大いに楽しんだ。


恩田陸 「上と外 6みんなの国」 平成13年 幻冬舎

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