海外のドラマや小説によく出てくる”To Kill A Mockingbird”。
名作なんだろうと思い、読んでみることにした。
人種差別のことが描かれている、と聞いたことがあったので、それがテーマなのかと思い、“どこが人種差別なんだろう?”“どういう形で描かれているのだろう”という意識ばかり言ってしまい、導入部分でなかなか感情移入ができなかった。
主人公の家の隣に住んでいる、家から一歩もでないBoo Radleyというのが黒人なのか…?うん?でも違うぞ?と混乱したり、と本当に無駄なところに意識を働かせてしまった。
確かに人種差別が要となってはいるけれども、『人種差別の本』ではなくて、Scoutという少女の物語と思って読んだ方がスムーズだった、と気付いたのは前半の半ばごろだった。
ただでさえ最初の方は、何の説明もなしの名前がぽんぽん出てくるし、しかも父親を名前で呼んでいるから尚ややこしい。
それを超えてしまえば大変に面白くて、名作と呼ばれる由縁がよく分かった。
特にScoutとその兄のJemの父親であるAtticusが素晴らしい。
Atticusと子どもたちのやり取りに、心が暖まって涙が出そうになったこともしばしばだった。
ざっとした話はというと、舞台はAlabama州のMaycomb。
Scoutが思い出しているという形式で一人称で進んでいく。
父親のAtticus Finchは弁護士をしていて、兄のJemはScoutと4つ違い。母親は亡く、Scoutは母親の記憶がない。
Atticusの遅い子供のJemtとScoutは、他の友達の父親に比べて歳を取っている気がしている。
Calpurniaという黒人女性がお手伝いさんとしてFinch家に来ている。
ある夏休みにDillという少年がやってくる。近所に住む叔母の元へ遊びに来ていたのだ。
Finch家の隣に住むBoo Radley(本名はArthur Radley)は一歩も家から出ないことから、都市伝説のようなものが生まれていて子供たちから恐れられていた。JemやScoutも学校の行き帰りに通らなくてはいけない時には走って通り過ぎたりしていたくらい。
その話を聞いたDillは、是非ともBooを見てみたい、と言いだし、ScoutやJemにけしかける。
それに気付いたAtticusに何度となく叱られるのだが、特にJemとDillは何度となく試みるのだった。
話に変化が訪れるのは、Atticusが黒人を弁護することに決まってからだった。
Bob Ewellという、教養もなければ、仕事もきちんとせず、子供は沢山いるのに学校にろくに行かせない、というどうしようもない人が、黒人のTom Robinsonが娘をレイプしたと訴える。
確実にTomは死刑になると分かっていても、Taylor判事から任命され断らなかったAtticusは”Negro lover”と陰口をたたかれることになる。
それはAtticusだけに留まらず、Scoutにも(多分Jemにも)及ぶことになる。
そんなScoutにAtticusがこう語る;
“You might hear some ugly talk about it at school, but do one thing for me if you will: you just hold your head high and keep those fists down. …”
“Atticus, are we going to win it?”
“No, honey.”
“Then why—“
“Simply because we were licked a hundred years before we started is no reason for us not to try to win,” Atticus said. (p101)
次の日、友達に言われるがScoutは言い返さず、”coword!”呼ばわりされる。
Somehow, if I fought Cecil I would let Atticus down. Atticus so rarely asked Jem and me to do something for him, I could take being called a coward for him. (p102)
この出来事がone of いいシーンだった。
結局この裁判は、陪審員の意識を変えることができず、Tom Robinsonに有罪が言い渡される。
傍聴席に座っていたJemとScoutは、絶対にAtticusが勝つと確信していたので(何せBob Ewell氏があまりだったので)非常にショックを受ける。
It was Jem’s turn to cry. His face was streaked with angry tears as we made our way through the cheeful crowd. “It ain’t right,” he muttered…
“It ain’t right, Atticus,” said Jem.
“No son, it’s not right.”
…
“Atticus—” said Jem bleakly.
He turned in the doorway. “What, son?”
“How could they do it, how could they?”
“I don’t know, but they did it. They’ve done it before and they did it tonight and they’ll do it again and when they do it— seems that only children weep. Good night.” (p284-285)
更にこれには後日談があって、翌日にTom Robinsonの父親達が大量の食べ物をお礼として裏玄関に置いて行ったのだった。
Tom Robinsonはというと、その後逃げようとしたという理由で銃殺されてしまう。
上訴するつもりだったAtticus達はショックを受ける。
一応元の生活が戻ってきたかのようだったが、Bob Ewellが裁判に関わった人たちを脅迫し始める。
まずはTomの奥さん。
判事の家には強盗として入る。
ついにはハロウィーンの夜、JemとScoutが襲われてしまう。
Scoutはハムの恰好をしていて、かぶり物であったので何がなんだかわからない内にJemがさらわれてしまい、誰かに助けられて家に着いてみると、なんとBoo Radleyであった。
Jemは大怪我をしており、すぐさま医者が呼ばれ、Jemは寝かされてしまう。
警察が来て言うには、JemとScoutを襲ったのはBob Ewellで、彼は自分が持っていたナイフに刺さって死んでしまったという。
結局、恐れていたBoo RadleyことArthurは、大変いい人で、JemとScoutをその夜助けてくれたばかりか、いつも見守ってくれていたことが分かる。
一応“めでたしめでたし”で終わるのだった。
が、結局“kill a mockingbird”の意味がよく分からなかった……。
話の途中で“kill a mockingbird”は大罪だ、という話が入るのだが(mockingbirdは何も害がなく、むしろ美しい歌声で人を喜ばせるから)、最後の最後のシーンにて;JemがBob Ewellを殺してしまったんだろうというAtticusに、Bobが自分の過失で死んでしまったんだと警察が言うことに対し、Scoutが”it’d be sort of like shootin’ a mockingbird”というのがよく分からない。
Tom Robinsonを射殺したからBob Ewellに罰があたったってこと?
英語力が足りないのだろうか…。ちょっと翻訳本を確認したいところだ。
Harper Lee “To Kill A Mockingbird” 1960, Grand Central Publishing
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