ハチの影響力の大きさがよく分かった:ローワン・ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したのか」


“ミツバチが大量死して大変!”というニュースを聞いた頃に本屋で「ハチはなぜ大量死したのか」というタイトルを見つけ、興味深く思って読みたい本リストに付け加えた。
それから大分時間が経ってしまって、興味は激減したけれども、まぁリストを消化するか、というノリで読んでみた本書。

一番面白かったのはハチの一生ですかね。
本当にハチはシステマチックに生きているんだ、と驚いた。このチーム(というか姉妹たち)が一丸となってライフサイクルを担っているのが、しかも効率的に担っているのがすごい。

結論としては、ハチの生態を無視して人間のいいように使ってきたツケだ、というものだったのは、まぁそれはそうでしょうよ…という感じだった。
つまり、本当は色んな種類の花粉が必要であるのに、アメリカでは農作物の受粉にハチを駆り立てるものだから、同じ種類の花粉しか得られない。
しかも、いろんな農場に連れ回されるのだから疲弊もする。
挙句の果てには、ハチを元気付けようと、人間はコーンシロップを与えたり、抗生物質を与えたりする。
ハチが消えてしまう前から、その土地では他の野生の虫たちがいなくなっていた。

つまりは“ハチ”という人間に直接関係のある昆虫の大量死によって、やっと自然界の崩壊という現状が突きつけられたにすぎない、というのが著者が言わんとしていることのようだ(と私は受け止めた)。
なかなか面白かったけれども、結論が見え始めてからは、今更明かにされた真実ではないような…という気がしてならなかった。

何気に一番怖かったのは中国の食品についての記述だった。
抜粋するのには大変長いので、P153から読むといいだろう。
中国について著者は最後に

私は、中国産の水産物はまったく口に入れたくはないし、中国産の蜂蜜を口に入れるとしてもその前にすごく迷うだろう。(p159)

と書き、更には注釈で“さらに言えば、中国製のおもちゃが誰の口にも入らないように心がけている。(p159)”と言っている。
まぁ中国が危ないというのも周知の事実ではあるけれども。


ローワン・ジェイコブセン 「ハチはなぜ大量死したのか」 中里京子・訳 2009年 文藝春秋

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