呂奉先の赤兎馬が出てきたところで「三国志」を読み途中だったことを思い出した:仁木英之「僕僕先生」

本の交換会で紹介されていた本で、表紙のかわいらしさが印象的だったのもあり、図書館で見かけた時に「そういえば!」ということで借りてみた。

ところがこのかわいらしい表紙があだとなって、私としては一向に楽しめなかった。
確かに設定は変わっていて面白いと思う。
仙人が女の子、というのが斬新的だし。

しかし表紙の絵が強烈過ぎて、読みながら頭に浮かぶ僕僕先生はこのかわいらしいお姿。
物語の最初の方はそれでも支障はない。雲に乗った姿もさぞ愛らしかろうと思って読んでいた。

ただ僕僕先生の弟子となった人間の王弁が僕僕先生に恋心を抱くようになる、となると話は別だ。
何度も言うが、表紙の僕僕先生はかわいらしい姿、つまり10歳くらいの女の子にしか見えない。
いくら本当に年齢はすごかろうと、外見が10歳のような女の子に恋し、あまつさえいちゃいちゃシーンが少なからず出てくるとなるとどうか。ただGRO~~SSってなもんだ。

話はというと至ってシンプル。

ボンボンの王弁は何もかもにやる気がない。ぼ~~っとして生きている青年。
そんな王弁に対して不満を持つ父親は、仙人に興味があって、王弁に仙人にお供えして来いといって送り出す。

そこで出会ったのが僕僕という仙人。
僕僕先生いわく、王弁には仙骨はないが仙縁はあるという。ちなみに王弁の父親にはどちらもない。
王弁の家に暫く通っていた僕僕先生だが、妖術の類いを嫌う政府から目を付けられたのもあって、王弁をお供にして旅に出ることになる。

その旅のなか、何に対してもやる気のなかった王弁が成長していき、ついでに僕僕先生との関係もちょっと変わっていき…てな感じになる。

僕僕先生は人間界が好きで留まっているのだが、人間界と天界の溝はどんどん深まってしまった。
そういうわけで天界の住人は天界に戻るように、というお達しが来るのだが僕僕先生はなびかない。
でも政府の方がうるさくなってしまったので、結局人間界から離れることになったのだが、その時に帰ってくる目印になるから、といって王弁に杏の実を渡す。

杏の実を植え木に育てた王弁の元へ、僕僕先生が再び現れる、というところで話が終わる。

中国の話の割には、文章に漢字が少なく、軽いタッチなので読みやすいといえば読みやすい。
ただ、仙人が女の子、という設定以外はあまり目新しいものはなく、しかも話にそこまでメリハリがなくてぼんやりとした印象になってしまっていた気がした。
期待していた分、残念だった。


仁木英之 「僕僕先生」 2006年 新潮社

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