ダートムーアに行ってみたい!:コナン=ドイル「バスカビル家の犬」 

絶対読んだことがあるのに、ほぼ覚えていなかった。
残っているのは、ダートムーアから想像できる荒野(嵐が丘のような感じ)の暗闇に犬の遠吠えが聞こえる、というイメージ。
そう遠くないイメージだけど、全く覚えていなかったおかげでワトスン君と一緒になってホームズに騙された。

(以下ネタバレあり)



今回の依頼主はデボン州からやってきた医者。
その地元に住むチャールズ・バスカビル卿は、その依頼主・モーティマー医師と友達であった。
ところがある晩、バスカビル卿は殺されてしまう。

その以前からバスカビル卿は大変何かを恐れており、モーティマー医師が問いただしたところ、バスカビル家に代々伝わる、『バスカビル家の犬』という伝説を告げられる。曰く、何代か前のバスカビル家の当主ヒューゴ・バスカビルは冷酷非道で、ある晩仲間と一緒になって娘を追いたてる。
仲間が、先に行ってしまったヒューゴに追いつくと、そこには娘の骸はなく、代わりに大きな体をした犬と、その犬に喉をかみ殺されたヒューゴの死体があった。
それから犬の呪いがバスカビル家に襲いかかる…という伝説なのだ。

もちろん、科学を信じるモーティマー医師としては、チャールズ・バスカビルの怯えを取り合わなかったのだが、実際にチャールズ・バスカビル卿の死体の近くには、普通の犬とは考えられない大きな足跡があったのだ。

ただモーティマー医師がホームズの元へやってきたのは、犯人を探してくれ、というものではなかった。
チャールズ・バスカビルの亡き後、その後継者を探したところ、バスカビル家と縁が切れていた甥がアメリカにいることが分かった。
その甥はイギリスに来ることになったのだが、バスカビル館に住んだ人間は皆非業の死を遂げると知っておきながら、彼を迎えてもいいのだろうか?という相談だったのだ。

次の日、その甥であるヘンリー・バスカビルがモーティマー医師に連れられて現れる。
ここで不思議なことがヘンリーの周りで起きる。まず新しく買った靴がなくなり、その後に古い靴がなくなったというのだ。
しかもホームズは、この二人が何者かに付けられていることにも気付く。

怪しい雲行きになったもののホームズは他の事件から手が離せない。
そういうことでワトスンをヘンリー・バスカビルの護衛係としてバスカビル館へ送り出すのだった。

さて、この土地での名士(というか学がある者)と言えば、ラフター屋敷のフランクランド氏と博物学者のステープルトン氏のみ。当然、チャールズ・バスカビルとモーティマー医師はこの二人とも親交があった。
このステープルトンには妹がいて、最初はワトスン、それからヘンリー・バスカビルはこの家に呼ばれるようになる。
そしてヘンリーは妹に恋してしまうのだった。
そうなるとワトスンにとって、ヘンリーに始終つきまといにくくなってしまう。
という訳で、ヘンリーと一緒にいない時間を使って、ワトスンはホームズへの報告用に調査を進める。

そしてついに怪しい青年が丘の向こうへ物資を運んでいる、ということをつかんだワトスンは一人で行ってみるのだが…
そこにいたのはホームズだった!
なんでもワトスンを使って、ホームズはロンドンにいると皆に信じ込ませながら、この丘から人々を観察し調査をしていたのだった。

話の真相はというと、このステープルトンはチャールズ・バスカビルの末の弟の息子だったのだ。
末の弟こそヒューゴの血と言えるくらいのひどい男だったので、勘当されていたのだ。
アフリカで産まれたステープルトンは、イギリスに戻って来て事業などをしてみたりするのだが、自分にもバスカビルを想像する権利があると思ったステープルトンはチャールズを亡きものにしようとしたのだった。
犬を飼いトレーニングをさせてから、うまく人を使ってチャールズを夜外におびき出して犬を仕掛けたのだった。
ところがまたバスカビル家当主がやって来てしまったので、今度は自分の妻を妹という振りをしてヘンリーに近付く。
油断させたところで犬をけしかけるのだが、実はその機会を作らせたのはホームズで、ヘンリーに動作を指示してずっと監視していた。なので犬をしとめることができたのだが、ステープルトンは取り逃がしてしまう。
ダートムーアの沼に埋まっているようだ…という結末で締めくくられている。

上記は簡単に書いているのだが、怪しい…と思われた人物が、実は違う事件に巻き込まれていたのだったり(執事夫婦が怪しい動きをしていたが、実は脱走囚人で妻の弟を匿っていたためだった。この脱走囚人はヘンリーと間違えら得て犬に殺されてしまう)、ヘンリー卿があんなに夜を怖がっていたのに外に入れた理由、などが次々に起こって、面白い展開になっている。

伝説の犬が実際の犬、というのが単純すぎる気がしないでもないけれども、ダートムーアに伝説となれば雰囲気はばっちりである。
ホームズがワトスンに内緒で潜んでおり、ワトスンの報告書が大して意義ないものだった、というはあまりにワトスンが可哀想だったけれど。


コナン=ドイル 「バスカビル家の犬」 1985年 偕成社

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