ホームズが実は生きてた設定、やっぱちょっと無理があるような:コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの生還」

ホームズが滝から落ちて、「バスカビル家の犬」を間に挟んでワトスンとの再会を描いた短編が入っている「シャーロック・ホームズの生還」。
いつもの偕成社の児童書版が借りられていたので、文庫版を借りてみたのがそもそもの過ちだった。
慣れ親しんでいないのもあるかもしれないけれども、訳があまりに古すぎる。
だからなのか知らないけれども訳自体もへたくそ。
ホームズとの再会のシーンなんて感動してもよさそうなのに、全然感動しなかった。

途中で“ニュース”を“ニューズ”と訳しているとこが出てきて、もう我慢の限界だ!ということで、偕成社のを借り直した。
ということで、この本で読んだ分だけを記載しておくと(ネタバレあり);


「空家事件」

記念すべきホームズとの再会話。

ロナルド・アデル卿が殺された事件をワトスンが解決してみようと事件現場に行く。
そこで老人にぶつかってしまうのだが、ワトスンが謝っているのにも関わらず、老人は悪態をつく。
ワトスンが家に帰ると、先ほどの老人が訪ねてきて、さっきは悪かった…と謝ってくる。そしてワトスンが目線を外して戻したときには、老人の姿はなくシャーロック・ホームズの姿があったのだ!

ホームズは滝の中には落ちておらず、モリアーティ教授だけが落ちたという。
なぜ今まで姿を現さなかったかというと、モリアーティ教授の手下がホームズは生きている、ということを知っており、命を付け狙っていたからだった。
実はアデル卿を殺した犯人も手下で、これを解決することでホームズは自分の命を狙ってるものを排除するのに成功する。

「ノーウッドの建築業者」

ホームズの元へ駈け込んで来た依頼人が、自分の話をする前に警察に捕まってしまう。連行する前に、と依頼人から聞いた話より調査を始めるホームズ。

依頼人は事務弁護士(法廷弁護士の助手らしい)なのだが、彼の元に両親の友達というオウルディカーという男がやって来て遺言を書きたいという。その中身はというと、自分の亡き後、遺産は依頼人にいくように、というものだった。両親から名前を聞いたことがあるくらいで、ほぼ初対面の相手に遺産をもらえるようになって随分戸惑ったが、遺言について話し合う為、オウルディカーの家に行く。

夜遅くなったのでその晩はその地の宿に泊まり、次の日の朝帰宅することになったのだが、電車の中でオウルディカーが殺されたことを知る。そして自分が重要参考人だというのだ!
そんな訳で慌ててホームズの元へ駈け込んだところ、警察に捕まったというわけだ。

結局、このオウリディカーというのはとんでもなく悪党で、その昔、依頼人の母親に求婚したものの振られた、というのを根に持っており、その息子を痛い目に合わせてやろう、としたことだった。
オウルディカーは死んでおらず、ホームズの一芝居によってあっさり出てくる。

「踊る人形」

棒人間が羅列されたものが依頼人より送られてくる。
その後に来た依頼人によると、彼にはアメリカ人の妻がいた。妻は自分の忌わしい過去から脱却したい、という理由で、夫に過去を語らないが、夫もそれを了承して二人は幸福に暮らしていた。

だがある日、この踊る棒人間の羅列がチョークで書いてあるのを見つけて、妻は真っ青になり、それから怯えて暮らすようになったのだ。夫は心配のあまり理由を聞こうとするが、まったく口を割ってくれない。

それからもこの踊る人形が出没するので、ついに依頼人は書き留めてホームズに送ってきたというわけだ。
この暗号を解明したホームズは慌てて依頼人の元へ駆けつけるのだが、既に遅く、依頼人は死んでしまっていた。
なんでも妻が夫に発砲して殺し、後から自分を撃ったようだ。妻の方は命を取り留めたが捕まるだろう、というのだ。
ホームズは踊る人形を使って真犯人をおびき寄せる。

真相はというと、妻はアメリカのギャングの娘で、この踊る人形はそのギャングが使っていた暗号だったのだ。
ギャング生活に嫌気がさした彼女はアメリカを離れ、イギリスで依頼人に出会い結婚する。
しかし、そのギャングの一味からコンタクトがあったので非常に怯えていたのだった。

ついにギャングが押し入って来て、依頼人は果敢にも悪党に向って発砲するのだが弾は当たらず、逆に向こうが撃った弾に当たってしまったのだ。妻は絶望して自分を撃ったというのが事の顛末だった。

「あやしい自転車乗り」

美しい女性の依頼人は、ピアノの家庭教師をしている。
母親と二人暮らしで、あまり暮らし向きがよくなかったところへ、叔父の友達だという二人の男が現れ、その一人がその仕事をオファーしてくれたのだった。
しかも母親をずっと一人にしておくわけにいかないというと、一週間に一回、実家に帰っていいというお許しまで出た。

というわけで、その人はいい人なのだが、もう一人の方は非常に嫌な人で、それでいて言い寄ってくるので大変困っている。一応、彼女の前に姿を現すことはほぼなくなったのでよかったが…

ところで依頼というのは、実家に帰る時に、屋敷から最寄の駅まで自転車で行くのだが、ずっとその後ろを誰かが自転車で追いかけてくるというものだった。しかも自分が止まれば向こうも止まる、という奇妙な人なのだ。

真相はというと、実は依頼人の叔父もなかなかの悪党で、この二人はその仲間だった。
叔父の死が近いというのを知ると、遺産が彼女に転がり込むのを見込んで、彼女に接近しようとしてきたのだった。
役割としては嫌な奴の方が彼女と結婚する、というものだったのだが、ピアノ教師の仕事をオファーした方が彼女に惚れてしまい、なんとかこの卑劣な男から守ろうと自転車でガードしていた、というわけだったのだ。

「プライオリ・スクール」

公爵の息子が、籍を置いているプライオリ・スクールから姿を消してしまった。
なんでも公爵とその妻は別居することになり、息子は母寄りの子だったので(まだ小さいし)大変母親を恋しがっていた。なので、それを餌に誘拐されたのでは!?という見解だったのだ。しかもその学校のドイツ人教師の姿も消えているのだった。

ただしホームズが調査すると、そのドイツ人教師の死体が出てくる。

真相はというと公爵の秘書は、実は公爵の隠し子であった。なんでも若い時の恋人との間の子だというのだ。
その秘書が財産を寄こせ、ということで息子を誘拐したという。
そして、息子が学校を抜け出したのに気付いたドイツ人教師が追いかけたのを見て、秘書から雇われた犯人が殺してしまったということだった。

「ブラック・ピーター」

引退した船乗りが、自分用に作った小屋で銛に突き刺されて死んでいた。
なんでも性格に難ありで心当たりが多すぎるところだが、事件当時にはなかったはずのドアの鍵穴の傷を見つけたホームズが、これをこじ開けようとした人がまた来ると予想する。
もちろんその人物は現れ、警察に捕まりそうになるが、ホームズは待ったをかける。

その人の父親は昔銀行を経営しており、銀行は倒産していた。
誠実な父親は、全額を返すために時間を欲しい、ということで証券を持ってノルウェイに渡ってしまう。
航海の途中、今回殺された船乗りに拾われ、証券の存在を知った船乗りによって殺されてしまう。家族はそんな事実を知らずに海の藻屑になったと思っていた。

ところが、その父親が持っていた証券の一部がロンドンのストックマーケットに出たというのを聞いてびっくりする。
それでその船乗りに会いに行ったわけだが、取り返す前に船乗りは殺されてしまったという訳だった。
実は銀行経営者が殺されたのを見た銛つきがおり、あれはお金だったに違いないと思い船乗りを脅しに行き、勢い余って殺してしまったのだ。そして手に入れた缶を開けてみたらお金ではなく、ただの紙切れだったのでまた働かなくては!となり、新聞に載っていた求人広告に誘われてやってきたのがホームズの元だった。

「恐喝王ミルヴァートン」

身分のある人や社会的ステータスの高い人の召し使いなどなどから、その人の醜聞を買い取り、それを使ってゆすりを行うのを生業にするミルヴァートン。
ホームズは、そのミルヴァートンにある手紙を握られてゆすられている困っている、という依頼を受け、なんとかその手紙を取り返そうとしている。

どうしても無理、となったので強行突破で行こうとなり、夜、家に忍び込む。
そこで目にしたのは、ミルヴァートンによって破滅の身となったさる高貴の女性がミルヴァートンを殺しているシーンだった。

コナン・ドイル 「シャーロック・ホームズの生還」 安倍知二・訳 1960年 東京創元社

コメント

タイトルとURLをコピーしました