感化されても いっこうに浮かばず みそひともじ:桝野浩一「ショートソング」

本屋で立ち読みして、なかなか面白いなと思いつつ、でもその日は買わず。なのになんとなく気になってしまって、また本屋に立ち寄って買ってしまった。それが「ショートソング」でした。

作者の桝野浩一さんは歌人らしく(何せ今まで短歌に興味がなかったので全然知らなかった)、この本もつまり短歌の話でした。

ハーフ顔のくせに自分に自信がない童貞国友は、憧れの舞子先輩にあてつけに利用され、歌会につれて行かれます。そしてそこで知り合った伊賀(ちなみに舞子先輩があてつけてやってやりたかった相手)は、天才歌人でプレイボーイ。
その歌会で国友が作った短歌を伊賀が絶賛したところから二人の交流が始まります。

話は端的に言うと、自信があまりない国友が自分の作った短歌を伊賀に認められながらも、伊賀に振り回され、伊賀はというと、早くに咲いてしまったが為の苦悩がありつつも、プレーボーイっぷりを発揮しながら最終的には全てをなくし(というか全ての女の人)を、短歌の再出発を目指すという感じでした。

まあ、劇的な事件が起こるわけでもなく、短歌をおりまぜて日常がつづられているのです。
でもその短歌をおりまぜて、ってのがすごくいい!というか、常に短歌が入っている感じが、ものすごくかっこよかったです。

色々短歌が出てくるのですが、なんだか私は言葉遊びっぽいのが好きな気がしました。
例えば;

 ミラクルで奇跡みたいなミラクルで奇跡みたいな恋だったのに
 馬鹿中の馬鹿に向かって馬鹿馬鹿と怒った俺は馬鹿以下の馬鹿

のような。
最後の終わり方がいまいちだったけど、それはもっと国友と伊賀さんの日常が見たかったからかもしれません。

(桝野浩一 「ショートソング」 2006年 集英社)

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