通勤時に読んでると、自分のちっぽけさがやたら身にしみる一冊:Frederick Forsyth “The Devil’s Alternative’ Arrow”

通勤時のみに読むという、なんとも無意味なルールを自分に課してやっと読み終わりました”The Devil’s Alternative” by Frederick Forsyth。ドキドキ中に何度下車のために中断させられたことか。ちくしょう。しかも世界レベルの非常事態時に「西船橋~西船橋~」なんて興ざめだい!

ちょ~面白かった!と軽い言葉では済ましてはいけない気がするくらい、重厚に面白かったです。
面白くなるまでになかなか時間がかかりましたが、苦難を乗り越えての面白さは余計に面白く感じる気がします。

話の構成を語ると、まず舞台は冷戦時代のロシア、アメリカそしてイギリス含むヨーロッパ(1982年らしい)。
大まかに4つほどの場面で前半は構成されています。

1つめはウクライナ系イギリス人Andrew Drakeが、ロシアから亡命してきたウクライナ人に出会うところから始まります。Drake含むウクライナ人が望むのはロシアからの独立。ということで、Drakeを中心にクーデターを企てます。それはユダヤ系ウクライナ人2人が、KGBのトップを暗殺し、飛行機をハイジャックしてドイツに亡命、そこからイスラエルに行く、というものでした。ところが、暗殺までうまくいったというのに、ドイツに行く飛行機の中で誤ってパイロットを殺してしまいドイツにて刑務所に入れられ(西ドイツ側にいられたのでよかったですが)足止めをくらってしまったのです。

2つめはロシア政府側。政府の中身は2つに分裂しそうになっていました。まず今のpresident of the USSR、Maxim Rudin側。そしてYefrem Vishnayev側。ちなみに暗殺されたKGBのトップYuri IvanenkoはMaxim Rudinのお気に入りでした。そんなMaxim Rudinに不利なことに悪天候と管理不行届きのために農作物がものすごく足りなくなってしまったのでした。暴動を始めとするロシア国内の混乱を予想し、それを防ぐためにRodin側は苦肉の策に出ます。それはアメリカに頼る、というものでした。一方でVishnayevが提案してきたのは戦争をふっかけるということでした。戦争を勃発させず、且つロシアの面目を保つためにアメリカと交渉を進めていくのでした。

3つめは我らがイギリス側。というかイギリス人の工作員Adam Munroが主人公です。赴任先のロシアにて、昔ベルリンで出会った元恋人(ロシア人)に出会います。彼女は旦那に先立たれ、子供一人を育てながらthe Kremlinにて秘書として働いていました。彼女は実際の政府を垣間見て絶望し、Murnroに内通するようになるのでした。彼女からMunroへ、そしてイギリス政府へ、それからアメリカ政府へと事情が流れていき、それを元にアメリカ政府はロシア政府と協定を結ぶために交渉を進めるのでした。

4つめはThor Larsenを船長としたFreya号の処女航海。これがまたなん出てきているのかと不思議に思うくらい(ま、のちのちに重要になってくるんだなとは予想はつきますが)、ま~ったく上の3つに関係なければ、特別な事件もなく、ただただ毎回、どこどこを通った、とか海の様子はどうだった、とかのどかなもんです。

それが!半分くらいいったところで、まあ大変なことになるわけです。

オランダ沖(確か)に着くという頃、Drake率いるクーデター軍団にシージャックされてしまうのです。彼らの要求は、刑務所に入っているユダヤ系ウクライナ人を当初の予定通りイスラエルに送れというものでした。さもなくば、船員を殺すか、大量の石油を積んでいる船を爆破するか、もしくはその両方をするとのことなのです。もちろんドイツ側は二人をイスラエルに送ることを前提に動き出しますが、そこへアメリカから横槍が入ります。というのは、ロシアがアメリカをつついてきたのです。あの二人をイスラエルにやったら協定は結ばない、と言ってきたのです。

とまあここから息つかせぬ展開になって、もうにっちもさっちもいかない状況になるのです。前半の一見退屈な、細かすぎるかと思うくらいの設定が大変効果を上げていて、全ての事情を知っている読者としては手も足も出ない状態がよくわかるわけです。

もちろん、全ての事情を知っていると思っていたのは虚構であって、最後の最後にどんでん返しが待ち受けていました。(以下ネタバレあり)

このクーデター軍団の首謀者Drake、確かにcriminalかもしれませんがどうも憎みきれませんでした。
シージャックをした時に、船長に指摘されて怒るところなど胸をつかれました;

‘I(Larsen) don’t believe the RUssians will ever rise against their masters in the Kremlin. Bad, inefficient, brutal they may be; but they only have to raise the spectre of the foreigner, and they can rely on that limtless RUssian patriotism.’
……
‘Damn and blast their patriotism,’ he(Drake) shouted, rising to his feet. …….
‘What kind of patriotism is it that can only feed on the destruction of other people’s love of homeland? What about my patriotism, Larsen? What about the Ukrainians’ love for their enslaved homeland? What about Georgians, Armenians, Lithuanians, Estonians, Latvians? Are they not allowed any patriotism? Must it all be sublimated to this endless and sickening love of RUssia?’

p409-410

あと書き方で面白いなと思ったのが、Drake軍団がシージャックしてから時間が出るようになっていて、それがそれまでの雰囲気とがらっと変えて、緊迫したものを醸し出しているような気がしました。
いや~ これが書かれていた時代に読みたかった!!(1979年に書かれたものでした、実際)

(Frederick Forsyth “The Devil’s Alternative’ Arrow”, 1995)

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