ホームズの髪の後退っぷりったら!:コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズ最後の挨拶(下)」


何度コナン=ドイルはシャーロック・ホームズを書くのを止めようと思ったのだろう…と思ってしまう。
“最後の挨拶”で現在のシャーロック・ホームズが描かれているのだが、もうベーカー街に住んでおらず、探偵業も営んでおらず、ホームズ好きとしては寂しい状況にいる。もちろんホームズは田舎ライフを楽しんでいるみたいなのだが。
さて、本書の収録作品はというと(ネタばれあり!);

「瀕死の探偵」

戻ってきたホームズとワトスンはまた一緒にベーカー街に住んでいるのかと思いきや、この話では離ればなれに住んでいる。しかも“結婚して2年めのこと”となっている。ということは過去話…?

それはさておき、ホームズの下宿先の女主人・ハドスン夫人がワトスンの元へ訪ねてくる。
なんでもホームズは病にかかって瀕死の状態だというのだ。
ワトスンが駆け付けるとなかなか部屋に入れてくれない。やっと入って来ても側に寄るのを禁じてきて、しかもワトスンの腕は信じられないと言う。
ホームズの要望で医者を呼んでくるのだが、ワトスンは隠れているように言われる。
医者がホームズに語るところによると、ホームズに怨みを持っていた医者は、ある疫病が塗りつけられたばねが入った箱をホームズに送りつけた。それから病気になって、もうすぐ死ぬのだ、と言う。
ここまで言わせるとホームズはケロリとして、ワトスンを証人に警察に引き渡す。
始めの方のホームズのワトスンへの言い方ったらあまりにひどい!と思っていたら

「ぼくが、きみの医者としてのうでを評価していないとでも思っているのかね?弱っているにせよ、脈拍も熱も正常なのに、瀕死の病人だと、するどいきみがみてくれるかい。」(p42)

と種明かしの時にワトスンに言う。ワトスンをおバカさん扱いする時もあるのに、ちゃんとワトスンを認めていたんだね!と思ったらちょっと嬉しかった。

「フランシス=カーファックスの失踪」

伯爵令嬢フランシス=カーファックスは気品のある中年にさしかかった貴婦人。でも未婚である。
あちこち旅行をしながら気ままに暮らしているのだが、ある時忽然と姿を消してしまう。
最後に出会ったのを見たというのは、宣教師とその妻と一緒にいるという姿のみ。
ワトスンが調査を命じられるのだが、レディ・フランシスをに言い寄り、その後もしつこく後を付け回している男というのを見つけ出す。この人が犯人だ!と思ったところでホームズに止められる。
というのは、実は彼はレディ・フランシスの昔の想い人で、二人は相思相愛であったのにも関わらず、彼の方は身分が低く、その分粗野であった。
お金持ちになった今、昔の悪癖も直し、レディ・フランシスに再び求愛しようとしたところで姿を消してしまったのだった。
彼と一緒に探すことにする。

そうすると、最後に一緒にいたと言われる宣教師と妻こそが、オーストラリアで悪名高い夫婦だったのだ。
レディ・フランシスが持っていた宝石が質屋に入ったのをきっかけに、夫婦を突き止める。
昔世話になった老女が亡くなり、その葬儀の準備をしている、というところだったが、何らおかしなところがない。
実はこのお棺に仕掛けがあり、老女と一緒にレディ・フランシスを埋めようとしていたのを、危機一髪で助け出す。

「悪魔の足」

ホームズが療養している先で出会った事件。
モーティマーという男は、遺産を巡るごたごたがあって兄弟とは別々に住んでいる。
今では仲良くなったというのだが、ある晩その兄弟の家を訪ねて、その晩のうちに帰ったのだが、次の日にその家で異常が発生しているという。
行ってみると、兄二人はゲラゲラ笑っており、妹は恐怖にひきつれた顔をしている。兄達はすっかり精神がいかれてしまっておりそのまま精神病院へ。
それを聞きつけた、兄弟たちの親戚である探検家が来たりなんかするのだが、今度はモーティマー自身が死んでしまう。

真相は、実は仲良くなったというのは嘘で、モーティマーは未だに遺恨を残していた。
そこで兄弟達を殺してしまおうと、探検家が未開の地から持ってきたという毒物を失敬して殺したのだった。
それに気付いた探検家は、妹を愛していたのもあって、その報復にモーティマーを殺す。

「最後の挨拶」

ここでのホームズは既に探偵業を営んでいない。サウス・ダウンズで養蜂実用書なんて書いちゃったりしてる。
しかも時代は第一次世界大戦に突入している。
なんとここでホームズは、ドイツ人スパイを暴きだし、逆に情報提供者として近付き、一気に捕まえてしまう、という二重スパイチックなことをする。
確かに、名探偵であればスパイとしてもいけそうだな、と思ってしまった。


コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズ最後の挨拶(下)」 各務三郎・訳 1985年 偕成社

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