カテゴリ分類が難しい本:松岡圭祐「霊柩車 No.4」

先輩から借りた松岡圭祐本第二弾:「霊柩車 No.4」。

それにしてもちょいと恥ずかしい題名でないか、これ。霊柩車ってので、なんとなく外に見せづらく、ブックカバーをかけてたから、大して気にしてなかったけど、改めてみると恥ずかしいよ~

今回の主人公は性別変わって、霊柩車ドライバー伶座彰光。死体を乗せながら、その死体の死因を当てたりまでしてしまう。

というような最初のエピソードを読んで、霊柩車ドライバーを探偵に仕立て上げた探偵小説なのかと思いきや、どちらかというとハードボイルドチックな話でした。

最初のエピソードは何だったんだーと思うくらい、次の霊柩車の客から話が一変していきます。
婚約者の死をきっかけに伶座と知り合ったいわゆる女子アナの安倍香織は、伶座からの影響もあって、ある病院の不正を暴こうとします。それと同時進行に伶座の過去が語られ、曰く伶座の妻は車にひかれて亡くなってしまった。ところが、伶座は裁判に負けてしまい、犯人は罪を問われることなく自由の身に。その二つが交わって、ある事柄が解明されていくのでした。

ところで、先輩が松岡圭祐の話をしたときに、「まぁ、始めは面白かったんだけどね。あの人の話ってパターンがあって、主人公が懇意にしている人が犯人だという・・・」と言っていましたが、まさにその通り!!

先に読んだ「千里眼」と驚くほど構成が似ている。
岬美由紀が伶座だったら、最初は嫌がっていたが生き抜く同士となる蒲生は香織。それから美由紀が崇拝していた友里先生は、住職兼火葬場主の今村でしょう。主人公が懇意にしていた人に裏切られる構成が似ていれば、裏切られて人間不信になってしまうような状況に立った主人公に、心のよりどころを与える人物(しかも最初は主人公が邪険にしたり嫌がったりしている)もいる。あと、主人公が命を狙われ、そこからその心のよりどころパーソンと命からがら逃げるところも似てるかね。

でも最後はちょっと違った様相をしていて、香織が病院の不正を暴こうとしたきっかけになった入院中の少女・由梨華が黒幕らしい・・・というのが最後のほうにちょろりと出てきて、これがシリーズだということがほのめかされていました(実際シリーズなのかは知りませんが)。

あと、最後の章が「序章」となっていたのが、アイディア勝ちって感じでした。
最後に霊柩車がテーマだけに、「死」に関する伶座のセリフを;

 「愚か者、だと?」
 あまり感情を表にださない伶座の顔に、はっきりと憤りのいろが浮かんだ。伶座は語気を強めてまくしたてた。「おまえのほうこそ、壊した物の大きさを知らない!生が幻想にすぎず、死を弔うことは偽善だと?三十万年前のホモ・サピエンスですら死者に花を添えることを忘れなかった。おまえはその旧人以下だ!」

p253

死生観とか宗教とか云々とかの前に、死を弔うというのは原始的で単純で理屈ぬきの行為なのかもしれないな、と思ったのでした。

(松岡圭祐 「霊柩車 No.4」 平成18年 角川文庫)

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