児童作家の中で「イニシャル・イニシャル・苗字」表記が流行っているのでしょうか:M・W・ターナー「盗神伝I ハミアテスの約束」

私の乏しい記憶によると三浦しをん姉さんの推薦本だった気がする(改めて考えると、自分で発掘した本以外のものは、ほぼ三浦しをん女史がエッセイで紹介していた本のような気がする…)「盗神伝」。
基本的に、翻訳本は英語で読もうと思ってるのだが、この「盗神伝」、本屋さんに売ってなかった。ということで、それを言い訳に翻訳本に手を伸ばしたが……

う~ん やはり翻訳本って独特だなぁ~ ある意味1個のジャンルとなっている気がするくらい、文体が他の小説と違うと思う。まあ、文章の書き方や、表現の仕方や、話の進行方法などなどが日本語と違うであろうから、大きく意訳しないかぎりそうなってしまうのでしょうけど。
例えば;

 ポルは無表情なままだったが、メイガスがおれにこう言った。今後一切、自分に向けられていない会話には答えるな。話しかけられないかぎり、口をきくな。おれは、自分が人間じゃなく、単に便利な道具として連れてこられたことを思いだした。

p76

“こう言った。~”というのもいかにも英語って感じだし、“自分に向けられていない会話”という受動的な文も英語っぽい。だからといって、これを自然な日本語に直せ、と言われても私にはできない芸当だけど……

翻訳本は一つのジャンルってことでいいんじゃないですかね!

さて肝心のお話はというと、最近児童書づいている私だが、そのトレンド(?)に違わず、図書館の児童書コーナーに陳列されていた。

表紙の絵から勝手にペルーとかそこら辺のイメージで読んでいたが、途中でこりゃギリシャっぽいや、と思い直したら、あとがきによると作者はギリシャをイメージしていたとのこと。

やっぱりね。何せオリープの木がいたるところで生えていたり、神話だとか、神々の形体(主人公の夢とかに出てくる)だとか、そこはかとなくギリシャを示唆している。

主人公は「なんだって盗める」と豪語する盗人の少年・ジェン。その言葉を証明するため、王の紋章の入った指輪を盗み出し、それを見せびらかしていたが為に捕まって牢獄につながれている。
それに目をつけたのが王の助言者〈メイガス〉。超どうでもいいことだが、私の中でメイガスは漫画「花咲ける青少年」に出てくるルマティの側近・クインザ・ハフェズの姿をしていた。だってなんか似てるし。

どうでもいいことその2;本の登場人物紹介でメイガスについて“意外とユーモラスなところも。”とあったが、私はまったくもってユーモラスなところを見つけられなかった。

閑話休題

とにかくこのメイガスはあることを企てていて、そのためにジェンは使われることとなったのだ。そのあることというのは、隣国エディス国に伝わる「ハミアテスの贈り物」を盗み出すというものだった。それは伝説の石で、贈られた者は不老不死となるらしい。最初に神・ハミアテスからその石をもらった王は、期を見計らって後継者にそれを渡したことから、石を持つ=国の権力者になる、という図ができあがった。しかしエディスの王がその石を隠してしまい、誰にもその場所を言わなかった為に伝説と化してしまったのだった。

そんな伝説の石を求めて、メイガスとその一行はエディスの向こう、アトリアに向かうことになったのだ。
メイガス曰く、その場所を古文書で見つけたらしいが、昔からそこに入って出てこれた人がいないという。

果たして…!?(以下ネタバレあり)

まあぶっちゃけて言っちゃうと、石を取ることができるっちゃあできるのだが、面白いところはそこではなく、最後の最後までどんでん返しがある。

ちなみにメイガスの一行というのは、盗人のジェン、ジェンより年上(らしい)メイガスの弟子アンビアデス、実は王の甥っ子だったというメイガスの弟子・その2のソフォス、ソフォスを守る為とメイガスに頼まれた為に来た兵士のポル。

メイガスたちの国はソウニス国といって、エディス国の向こうにあるアトリアを侵略し統一したい。ところがエディス国が中立国として存在しているため、それもままならず、その打開案としてメイガスが「ハミアテスの贈り物」を盗み出し、ソウニス国王に渡しエディス国王にして、はてはソウニス国が3国を統治する、というシナリオを描いたのだった。

なんだか壮大でワクワクする冒険譚のようだけど、実はそこまでではなく、まず登場人物にあまりに魅力がない。というか、誰に感情移入すればいいのかさっぱり。
主人公はやたらつっかかるガキっぽいし、メイガスも地位的に歳がいっていそうなものの、やけに子供っぽいところ(悪い意味で)があって年齢不詳だし、ポルはまあ、こういう話によく出てくるようなあんまり存在感のない用心棒的な兵士だし、アンビアデスはただただむかつくし、ソフォスもこの中では一番まともなキャラだけど平凡だし……

試しにamazon.co.jpで批評を見てみたら・・・結構評価が高い。
どうやら1巻は大したことない序章って感じだけど、次からぐわぁぁああっとくるらしい。
ということで批評を信じ、三浦しをん姉さんを信じ、2巻に手を出してみようと思う。

(M・W・ターナー 「盗神伝I ハミアテスの約束」 2003年 あかね書房)

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