暗闇を怖がっているのは1人だけ:Sidney Sheldon “Are You Afraid of the Dark?”

父はグアムへ出張する際に、英語を思い出すためにといつもシドニー・シェルダンを買うらしい。この間出張に行った時もその慣習通り、シドニー・シェルダンの”Are You Afraid of the Dark?”を買い、それをちゃっかり借りた私。
実は、シドニー・シャルダンを初めて読んだ。読んでみて、父が英語を思い出す為に読む、というのがよく分かった。なるほど、英語もあまり難しくなく、とにかくpage turner、本を手放せなくなる。
でもだからと言って、怒涛のような展開でもなく、手に汗を握る展開にもならない。それなのに本を閉じれないってある意味すごいなぁ~~と妙に感心してしまう。

話はいたってシンプル。

Kingsley International Groupという全世界に支店を持つシンクタンクに関わる人間が、何年かに渡って不審な死をとげていた。特に今回、4人が同時期に一見自殺のようだったが、警察の調べで殺人の容疑がかかる。その殺された4人のうち2人の妻が、偶然出会い、殺されかかるところから物語が本題へとうつっていく。

その2人を狙っているのはKingsley International Groupのトップ、Tanner Kingsley。武器も何も持たない2人は、知恵を使いつつ彼から逃げ、何故夫が殺されたのかを探っていく、という話。

ちょっと面白いのが、この2人があまりに性格が違って、最初というか結構長い間、いがみ合っているのだ。読者としては「けんかしている場合じゃないでしょ!!」と思うのだが、ある意味リアルな部分と言えるかも。まぁ、最終的には窮地を共に脱している内にとても仲良くなるのだが。

そして驚くべきことに、よく考えてみると、メインストーリーである逃げ惑うシーンの割合が、全体から考えるとものすごく少ない。2人の妻の夫との馴れ初めとか、夫との思い出のエピソードがやたら沢山あるのだ。しかもそのエピソードがやたらロマンス小説調。しかもこの2人だけじゃなくて悪役のTanner Kingsleyのロマンスまであるんだから驚きだ。

「そんなんはどうでもいいから、2人はどうなっちゃったのよ!?」と思って先を急ぐから、page turnerと化しているところもあるかもしれない、この本。

そんな中、夫が死んで妻1が嘆き悲しむシーンの;

She wanted to curl up into a tiny ball.
She wanted to disappear.
She wanted to die.
She lay there, desolate, thinkin about the past, how Richard had transformed her life….

p21

が、こうやって並べることによって悲しみがよく表現されているなぁ、とか、妻2の生い立ちの話で懇意にしていた図書館の司書に言われる;
(本は虚構の世界で、世の中には魔法とかないんだから、という若かりし日の妻2が言ったことを受けて)

“Kelly, there is magic, but you have to be the magical. You have to make the magic happen. (……) First, you have to know what you dreams are. “

p62

という、ちょっとcheezyな感じもするけど、ほっと温かくなる言葉だよね、とか流石に押さえているところは押さえている。

ただエンディングはとっても腑に落ちなくて、こういうエンターテイメント系だったら徹底的に悪を懲らしめてほしいところなのに、あっさりし過ぎ。

まぁでも、こう言ったら悪いが、3日後には話も忘れていそうな軽い話だったので、エンディングがどうであろうとがっかり感はものすごく少ない。とにかくいい暇つぶしの本だった。よくアメリカ人とかイギリス人がバカンスで、ビーチやらプールサイドやらで推理小説だのサスペンス小説を読みながら肌をやく、という話を聞くが、こういう本を読んでるんだろうなぁ~とふと思った。

(Sidney Sheldon “Are You Afraid of the Dark?” 2004, Warner Books)

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