結局ジェンが何故神に見捨てられたのかよく分かんなかった:M.W.ターナー「盗神伝III アトリアの女王 後編―告白―」

結局ジェンが何故神に見捨てられたのかよく分かんなかった 

上巻の内容を忘れない内にと借りてきた「盗神伝」下巻だが、なぜか手付かずのまましばらく放置。そのせいか気分の盛り上がりを維持できずに読み始めた為、100%楽しむことができなくて自分としても残念だった。

今回はエディスとアトリアの戦いから終結までが描かれていた。ちなみにソニウスの出番はまったくなし。またもや女王の盗人であるジェンが大活躍をする。でも前回のように葛藤だとかあまりなく、どちらかというとアトリアの女王の目線が多かった。(以下ネタバレあり)

簡単に結末までのあらすじを言ってしまうと、アトリアの女王がエディスの盗人によって捕まる。そこのシーンがちょっとかっこいいので抜粋をすると;
(エディス軍に攻められて、近衛兵に連れられて逃げていくシーンで)

 薄暗いなか、女王は慎重に桟橋を歩き、ボートの前で立ちどまった。ボートをつないでいるロープは長く、一メートルほど水につかっていた。女王は手で合図を送り、近衛兵にボートを引き寄せるように指示した。目の端で、近衛兵がいわれるままに片ひざをつき、水のほうに手をのばすのをみていた。失った右手のかわりにとりつけられたフックが、木でできたボートのへりにくいこんだ……。

p67

とまあこの近衛兵がジェンなのだが、それは前の巻でメイガスを盗むと同じ方法なので新鮮ではないが、ま、とにかく。

女王がエディスに囚われたのをきっかけに、エディスと手を組むことになる。というのはアトリアには、メデアの大使がいて、アトリアを乗っ取る機会を虎視眈々と待っていたのだ。メデアは内陸の大国で、もしアトリアが乗っ取られてしまったら、エディスやソニウスも危ない。

そんなわけで、二人の女王は共謀を計り、成功した暁には協定を結ぶことになった。

こうやって流れを見てみると、歴史書を読むようで面白そうなのだが、如何せん、歴史書のように厚みがない。しかも細かい設定とかも明記されておらず、ジェンやアトリアの女王がいくつくらいなのかなどなどがよく分からない。

思うにファンタジーというのは、細部が細かく設定されていればいるほど面白みが増す。例えば全世界でベストセラーになったハリー・ポッターシリーズなんてそれの最たる例だと思う。魔法の世界の生活があんなに細かく設定されているからこそ(何せ時計だとかお菓子だとか家庭菜園の様子まで描かれていた)、あんなに皆が熱中したのだと思う。

この作者がはまったという「指輪物語」だって設定が細かい。特に種族に関する設定がとても細かくて、トールキンはエルフ語まで創作してしまったくらいだ。

それに対して「盗神伝」はあまりに歯抜けっぽくて、訳者は“読者の想像力をかきたてて良い”と書いてあるけれども、私にとってはちょっと味気がないような気がしてならないのだ。
だからだろうか、ジェンがアトリアの女王のことが好きで告白し、プロポーズするシーンも、なんとなくとってつけた気がしてならない。

一重に私の想像力が足りないだけなのだろうか・・・?

(M.W.ターナー、金原瑞人&宮坂宏美訳 「盗神伝III アトリアの女王 後編―告白―」 2003年 あかね書房)

コメント

タイトルとURLをコピーしました