舞城王太郎第三弾「世界は密室でできている。」
今作は前2作のようにつながっている訳でなくて、それでもちょっと関連ある物だった。
1作目で出てきた三朗が書いた探偵シリーズ、ルンババが主人公なのだ。つまり三朗が書いた小説って設定なのか!?
タイトルで宣言している通り密室てんこ盛りの今作。密室しか出てきません。
主人公はルンババだが、ルンババがシャーロックホームズであったら、ルンババの隣に住む僕こと西村氏はワトソン君。
彼の目線で話は進む。
大まかな話の流れはというと、中3の修学旅行で東京に来た僕とルンババ達。とある事情により、「僕」が皆のように都庁の展望台に登らずに待っていると、派手に痴話喧嘩をしてるカップルに出会う。
その喧嘩のとばっちりを受けた「僕」は、気絶し、彼女・椿に拉致されてしまう。
そんなきっかけで椿と榎という奇妙な姉妹と関わることになる。
主な事件は3つ。
1つ目はルンババが中学生にしてバリバリの探偵よろしく、警察の要請を受けて解く密室殺人事件。
2つ目は、椿の喧嘩相手=不倫相手の妻・子供が密室で殺害される事件及び、その後椿たちの家て不倫相手が殺される密室事件。
3つ目が1つ目の殺人犯がまた密室殺人を犯し、その犯人を別の奴が殺す、一見オープンな所での殺人だが、実は密室殺人という事件。
相変わらずぶっ飛んで、支離滅裂っぽいがそれが計算された上でのものだろう、と思わせる物語だった。
そして相変わらずな文体;
とにかく僕は、泣いてるエノキに背中がゾクゾクして、じっと立ってられなくて足踏み。ドタドタドタドタ。「エノキさん?何?どうしたあ?」「ふ、あのね、ちょっとウチにね、いられなくなったからね、今からそっちに行きたいんだけど」「え?」。何?「そっちってどっち?」「ふう、そっち」「どこ?」「福井、もう、馬鹿」。また馬鹿だ・・・・・・え?「福井?今から福井来るんかあ?どうやって」「新幹線」「何しに?」←もうやや絶叫気味。背中のゾクゾクが止まらない。「旅行?」。そんな訳ない。
p53-54
私は相当好きだが、好き嫌いが別れそうな文体だよなぁといつも思う。
物語自体はそんな好みでないので、ほとんどこの文体に会う為に舞城王太郎を読んでる感じがしてならない。
こんなユニークな文体でブラックジョーク的な話を書き、それでいて椿が死んでる妻のお腹から取り出した子供の名が三朗だったり、犯人を殺した犯人が奈津川と言うらしい、という茶目っ気があって、私はツボです。
しかし、こうも親との確執ばかりをテーマにされると、舞城王太郎さんに何かあったのかと邪推してしまう・・・
(舞城王太郎 「世界は密室でできている。 THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS」 2002年 講談社)
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