悪いけどミロの方が好きだな・・・

せっかくだから、柴田よしき作品全部網羅しよう、と思い立ったのは花咲シリーズに出てくる私のお気に入りキャラ、山内が出ている「聖なる黒夜」が、緑子シリーズのスピンオフ作品らしいから。

そんなわけで年代順に読みます!待ってろよ!山内さん!

さてさて柴田よしきのデビュー作は、横溝正史賞受賞作品の「RIKO―女神の永遠―」。
主人公はタイトル通り、新宿署の警部補である村上緑子(りこ)。
防犯課の鮎川慎二と強姦ポルノビデオの捜査をしていたが、それが殺人事件と絡んでいるということで本庁が介入してくる、というところから話が始まる。
その本庁こそが緑子の古巣で、上司と不倫した挙句、その妻と刃傷事件に発展してしまったことから、栄転という形で新宿署に流されたという過去を持つ。
しかも不倫がばれただけでなく、先輩より昇進したのと、告白されていたのに、それを蹴って不倫したということで恨みを買ってしまったが故に、先輩に強姦され噂を流され、という悲惨な過去を持っていた。

その上司と先輩が本庁からやってきて、緑子達の手柄をかすめ取りそうだというのだから、緑子も奮起する訳だ。

男運の悪さと、バリバリ働く女、といえば桐野夏生の村野ミロっぽいが(あ、名字も似てるし、どちらも舞台は新宿だ)、決定的に違うのは、ミロは男っ気がないのに対して、緑子は開き直ったかのようにお盛ん。

実際、そこが本書を特徴付けてて、扱う事件がポルノビデオであれば、エロシーンが結構の比率を占めてる。何せ緑子ったら、鮎川、元上司、元先輩、交通課の婦人警官とできちゃってるのだ。

それなのに、エロ小説になってないのが、柴田よしきの力量なのかもしれない。
それは多分、緑子がその一人一人のことが相当好きで、でも愛してるとは言えない、そして愛とはなんぞや、と悩んでいるのがビビッドに描かれているからだろう。

これは心の葛藤のシーンではないけれど、なかなかよく描写されているなぁと思うところ;

 緑子はそのまま、そこに泣き崩れた。だがもっと爆発するような悲しみを予想していた緑子の心には、その悲しみは余りに切なく、頼りない、捕らえどころのないものだった。緑子の喉から出て来るものは、悲しみの絶叫ではなく、糸のように細い嗚咽だった。

p169

ただやはり、柴田よしきの後の作品を知っているため、まだまだだな感がぬぐえなかった。
緑子のことばかりで、事件のことはすぐ忘れてがちだし、身近な人が犯人というシナリオもこの筋書きならお決まりネ、という感じだった。

まぁ なにはともあれ、山内さんまでまっしぐらに読み進めるぞー

(柴田よしき 「RIKO―女神の永遠―」 1995年 角川書店)

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