医者しながら小説書くってすごいよなぁ・・・:海堂尊 「ナイチンゲールの沈黙」

図書館で予約して、やっと回ってきた「ナイチンゲールの沈黙」。読み出したら止まらなくて、次の日が月曜日だというのに3時までかけて完読してしまった。おかげでとても眠い。

前作の「チームバチスタの栄光」から随分離れて読んでしまったので、人間関係を把握するのに時間がかかってしまったが、いやはや本当に面白かった!

今回の主な人物は、小児科看護師小夜とその担当患者の少年牧村瑞人。
あとはひょんなことから、主人公田口が担当することになってしまった歌手冴子もキーとなる。

事件は話の3分1過ぎてやっと出てくる。
牧村少年のどうしようもない父親が殺害される。しかも、体内の臓器が取り出され、部屋に分散されていたのだ!

そんなこんなで、白鳥が登場し、白鳥との古い友人であり警察庁から出向中の加納も登場する。
犯人は結局意外な人物だった!というわけではなく、ずっと容疑者として提示されてた人物だったし、どうやってやったのかも概ね予測通りだったので、推理小説の醍醐味ってのはなかった。
と文句ついでに、もう一つ。

病院ものということで、とても現実的な雰囲気を醸し出している中、話の本質みたいなところでおとぎ話みたいな話が出てくる。

というのは、歌手冴子と小夜の歌声は特殊で、人々にイメージを植え付けられるのだ!
実際、小夜は歌を通して告白したりするのだ。

そこがどうも受け付けられなかった。エピソード自体が、というより、それがバリバリ医療推理物に組み込まれてると違和感を感じるというか、なんか釈然としない。

それが結構話の中心になっているので気にくわない訳なのだが、では何が面白かったか。
ずばり(なんか古くさい表現ですな)、登場人物の相関性が面白い。
具体的にいうと、加納と白鳥の絡みとか、田口と速水と島津との絡みとか。あー 私はこういう古い付き合いのじゃれ合いって好き。

それだけでなくて、事件が発生するまでの、田口先生と子ども達の交流もよかったなぁ。
とにもかくにも、事件があって、それを推理し解決する楽しみというより、病院内で繰り広げられるヒューマンドラマみたいのが面白かった。医者と患者とか看護師と患者の絡みだけでなく、医者同士の絡みとかね。

いくつか面白い描写があったので抜粋;

さらさらと笑い声が流れる

p45

田口は、加納と白鳥の二人を交互に見つめる。隣で玉村も同じように視線を走らせている。視線の綾取りをしているみたいだ。

p244

加納の口から出ると、「仲良し」という単語が異国の言葉に聞こえるのはなぜだろう、と田口は思った。

p249

強気同士のアクティブ・フェーズ、オフェンシブ・トーク(攻撃的話法)がぶつかりあうと、こういう事態になるのか、と田口は心の中の学習帳に観察日記を書きとめた。日記のタイトルは“どつき合い”。

p253


こういうクスッと笑ってしまう文章をアクセントとして話を進行させてるというのも、私の中でポイント高い要因の一つだ。

(海堂尊 「ナイチンゲールの沈黙」 2006年 宝島社)

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