読み終わってから、これが最終章と知った悲しさ・・・ゆっくり読まなくては:上橋菜穂子 「天と地の守り人 第一部」

「蒼路の旅人」からいてもたってもいられず、急いで借りた「天と地の守り人」。
一気に第一部を読んでしまった。

ここでチャグムが活躍が描かれている“旅人シリーズ”と、バルサたちが活躍する“守り人シリーズ”が結びつく。

チャグムからの手紙を受け取ったジンは、使いを出しバルサにロタへ行くよう頼む。
ロタにたどり着き、なんとかチャグムの足跡をたどろうとするバルサの前に、チャグムをさらってタルシュへ連れて行った張本人、ヨゴ枝国のヒュウゴに出会う。そして彼から、タルシュ帝国の王子二人の勢力関係を知り、“ロタとカンバルの同盟を実現させたらタルシュの勢いは止まるだろう”というチャグムへの伝言を受ける。

そしてその後、バルサはロタ王族のカシャル〈猟犬〉に出会う。
そこでチャグムの安否を知る。というのは、チャグムがロタに来て初めて訪れた領主こそ、タルシュ王国の兄皇子と密通していた南部領主の一人だったのだ。でもそこから脱出し、バルサが出会ったカシャルの案内で、ロタ王の弟イーハンの元へ向かっていたのだった。

バルサは、いったんはチャグムの言付けを聞いて、新ヨゴ皇国、タンダの元へと帰りかけるのだが、ヒョウゴが密かに置いて行った文を見て、チャグムを追いかけることを決意する。
その文には、チャグムは見てはならないカンバル人を見てしまったらしい、そのために刺客が放たれた、と書かれていたのだった。

これは読者が知っている事実なのだが、チャグムは二つの重要な事実を知っていた。ひとつは、タルシュの兄王子には南部侵略権を持っていないという事実。もう一つは、ロタの南部の領主と通じている、カンバル王の〈王の槍〉がいる、という事実。

なぜこれらがキーになるかというと、タルシュ帝国の兄王子と弟王子は競い合っている。今、新ヨゴ皇国を攻めようとして次期王の道へ着々と進んでいるのは弟王子。兄王子はそんな弟王子を出し抜くには、ロタを手中に収める必要がある。そんなわけで、ロタの南部領主たちを味方につけているのだが、南部領主たちが兄王子サイドについているのは、弟王子が南部侵略権を握っていることを知らないからだった。

そんなわけで、チャグムは兄王子の勢力に狙われることになったのだった。
バルサはロタ王の弟イーサムにやっと謁見できたものの、チャグムと入れ違いになってしまう。
そしてイーサムより、ロタは新ヨゴ皇国とは同盟を結ばない、と聞かされる。

カンバルへ向かったチャグムを追いかけるバルサ。
そしてやっとチャグムと出会うのだった。

かなーりはしょってしまったが、あとはこれにナユーグに春が来て、異変が起きているらしい、とか、タンダが徴兵されてしまった、とか。

バルサがやっとチャグムに出会えて;

「あんたをさがしはじめたとき、あんたにあえたら、いってやろうと思っていた。
 皇太子として葬式あげられちまったなんて、天がくださった贈り物だ。ようやくくだらない鎖からときはなたれたね、おめでとうってさ。」

p341

と言うシーンがあるのだが、確かにチャグムはずっと皇太子になるのを嫌がっていた。でもシュガへの手紙で;

 枝国されてしまえば、新ヨゴの民は枝国軍の兵士として徴集され、ロタ王国やカンバル王国を攻める道具に使われる。これまで友であった国々の民を殺すよう命じられるのだ。…(中略)…
 こんな未来を、わたしは、民に与えたくない。――望んで帝の子として生まれたわけではないし、帝になりたいなどとは一度なりとも思ったことはないが、それでも、わたしは、否応なく国の司としての立場にある。そうであるなら、わたしは、民の幸せのために、己ができる、最高の選択をせねばならない。

p2

なんて書いてるチャグムは本当に本当に成長したんだな、と妙に感慨深くなってしまう。
こんなに登場人物に感情移入できるなんて、作者の上橋菜穂子女史には敬服してしまう。

さあ、さくさく第二部読むぞーーーー

(上橋菜穂子 「天と地の守り人 第一部」 2006年 偕成社)

コメント

タイトルとURLをコピーしました