第一部を読み終えて本棚にしまったその手で第二部を取りだした「天と地の守り人」。
そのままマッハの勢いで読み進んで、日付的には次の日、でも体的には同じ日に読み終わってしまった。
バルサとチャグムはカンバル王国へ向かう。
様々な困難が立ちふさがるが、最終的にはカンバル王に謁見でき、ロタ王の弟イーサムの新書を携えて、同盟までこぎつけた、というのが本書の大まかなあらすじ。
この北方の危機だけではなく、ナユグに春が来ていることからこちらの世界でも弊害が出てきている。
というのはナユグの世界では、海面が上がり、こちらの世界でいえば山まで水につかっている状態。このままだと雪解けも通年よりも早く起き、それによって雪崩や土砂崩れが起きるのだ。
ということで、戦争も起きるわ、天災も起きるわでにっちもさっちもいかない状態なのだが、やっぱりメインは戦争。
でも血みどろなものではなく、できるだけ血を流さず、大国へ歯向かうってんだから、息もつかせぬ展開となっている。
一番の見せ場はチャグムがカンバル王の前で膝を折ったところだろう。
そこが緊迫したシーンだったのはもちろん、その後;
ねがいつづけてきたことがかなったのに、なぜか思ったほどによろこびがわいてこない。心の底に、しこりのように屈辱感がくすぶっているのを、チャグムはもてあましていた。
p282-283
自分が、これほど皇太子であることを誇りに思っていたとは、これまで気づかずにいた。天ノ神の子であることをほこり、あがめられるのを当然と思っている父に反発していたくせに、いざとなると、こんなにたいせつなことのためでも、人の前で膝をおったことが、たえがたい恥辱に感じられる。
とチャグムが思い悩むシーンがリアルだ。あまりくどくなく、決して“正義”だけでないチャグムの姿を見せてるから、親近感というか応援したい気持ちになるんだな。
あと、ファンタジーの醍醐味で、想像上の食べ物はもちろん、架空の独特な言い回し、というものがあると思う。
作者が文化人類学者のせいか、ちょっと土地特有の食べ物や言葉が紹介されているのだが、それがまたいい。たとえば;
「アラム・ライ・ラ。」
p92
バルサがつぶやいた。…(中略)…
「ヨンサ方言のカンバル語で、山が頬をそめている……って、いったんだよ。母なるユサの山々は、お日さまに恋をしてるんだとさ。いとしいお日さまが、眠りにつくまえに、ああして頬をなでると、山は頬をそめる。――千年も、万年も、年をとった老女でもね。」
とか。
ハリーポッターも想像上の動物・食べ物・単語が良く出てきて、私はそれが面白かったのだが、いかんせんディーテールに凝りすぎて、本文よりもそっちに気を取られる傾向にあった。それが本書では、そういうバランスもうまく取れていて、感服の至りです。
さあ、このまま第三部へ!
といきたいところだけれど、明日が怖いので寝ます。
(上橋菜穂子 「天と地の守り人 第二部」 2007年 偕成社)
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