この頃時系列に読むのがはやってます、自分の中で。
ということで前々から友達に薦められ、何作か映画化されている伊坂幸太郎のデビュー作「オーデュボンの祈り」。
一言でいえば、奇妙な話だった。
主人公の伊藤がまったく奇妙な島に連れてこられてしまった、というのは、まぁお話的によくある展開だから分かる。
でも案山子がしゃべる、っていうシーンで、虚を突かれたというか、なんだこれーーーー!!!と頭の中は混乱状態になった。まったくあらすじを読んでいなかったので、本書に対する基礎知識もなく、とつぜん「しゃべる案山子」。しかも島民に慕われ、まるで神のように崇められている。
一応話の筋は、ある日案山子は引っこ抜かれ、頭も取られ、“殺されて”しまった。そしてその殺人事件を主人公が解く、という流れになっている。
でもそれはぼんやりとした本筋であって、本書の大半を占めているのは、外界、つまり読者サイドの伊藤と、奇妙な島民たちのやりとりとなっている。
実際、実に個性的な人物が次々と登場する。
伊藤の案内役となっているのは、どこか人間として欠けていそうな日比野。
外界と唯一橋渡しとなっている轟(伊藤を連れてきたのも彼)。
反対言葉しかしゃべらない画家園山。
地面に耳をつけて自分の心音を聞く少女若葉。
罪を犯した人を銃殺する美青年桜。そしてそれを容認する島民と警察たち。
などなど。
最初の方、あまりに訳のわからなさに、放棄しようかと思ったが、
僕は忘れ去られた黒子のごとく、脇に立ち、三人の会話を聞いていたが、幾つかのことを把握した。
p92
という表現に行きあたって、「村上春樹みたい」「この表現好き」と思ったので読み終えることができた。
不思議なもので、いったん“村上春樹みたい”と思ったら、本当に至る所で村上春樹要素を感じ取った。少しずれた奇妙な人たちが現れるところやら、それでいて奇妙なりに秩序があるところやら、登場人物がきれいな日本語をしゃべるところやら、文章が醸し出し雰囲気やら、なんだか似てる。
そう思ってたら、Wikipediaに「いわゆる春樹チルドレンの代表格といわれ,村上春樹の影響が強く感じられると指摘されている。」って書いてあった。ふーん
まずまず面白かったので(偉そうだ)、読み進めて行こうと思う。
(伊坂幸太郎 「オーデュボンの祈り」 平成15年 新潮社)
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