こういう人と一緒に旅したら面白いだろうな

前に読んだ高田崇文の「毒草師」。それの続編を読もうと図書館に行ったら、それが実はQ.E.D.シリーズのスピンオフ小説だったと知り、それじゃあということで御名形史紋が初登場する「QED 神器封殺」を読み始めたのだが・・・意味が分からん。
どうやらその前の「QED~ventus~熊野の残照」から読まなくてはいけないみたい。
長いな道のり、と思いつつ読み終わりましたよ「熊野の残照」。

今回は事件という事件はまったくなし。
いつも奈々目線なのに、今回は違って神山禮子の目線。

学薬旅行にて熊野に行くことになった一向。学薬旅行初参加となった神山禮子は、年の近い奈々と行動することにする。彼女には人には行っていないことがあって、実は熊野出身だった。しかしあることがあって、熊野の家を飛び出し東京に住む叔母の養子となって現在にいたる。

この神山禮子の回想(というか“レイちゃん”と呼ばれていた人の回想)が、学薬旅行のシーンに挿入されている形なのだが、その回想にちょっとしたどんでん返しがあるだけで、あとはひたすら桑原が熊野の蘊蓄を垂れ流す趣向となっている。

しかしまぁなんというか、毎度毎度桑原の、というか高田氏の知識には驚かされる。

が!

1作目の「百人一首の呪」が一番面白かったんだよな~ そして何が面白かったのか考えると、それが身近なものだったから、よく知っているものが「実は○○だった」というのが面白かったのだ。
それが熊野だとなると、熊野のことは全く知らないので(熊野古道だとか那智の滝だとかは分かるが)、気のない「ふ~ん」で終わってしまうのだ。

もとから知らないものを「実は○○でした」と言われて、感動するなというのが無理なんです。
とりあえず、熊野には詣でる順番があってそれが五行説にならっているらしい。

つまり、『本宮本社・西(阿弥陀如来)』が金、『速玉大社・東(薬師如来)』が木、『那智大社・南』が火(だから山火事の危険を冒しても、火祭りが行われるらしい)とおくとすんなりいく。

面倒くさいのでその後を抜粋すると;

「でも……」沙織さんが口を挟む。「本宮・新宮・那智じゃ、五行のうち三つだけでしょう。『土』はないんですか?」
「もちろんあるよ」
「それは?」
「熊野古道じゃないか(傍点)」
「え」
「那智大社から本宮へ向かう道だよ。数多くの上皇たちが通った大雲取・小雲取超えじゃないか。円座石のある、古道を代表する参詣路だ」
「なる…ほど。それじゃ『水』は?」
「そのままだ。熊野川(傍点)じゃないか」
「あっ」
「そしてこれが、本宮大社から速玉大社へ向かう正式なルートとなるわけだ。これで全て繋がるだろう。本宮大社(金)→熊野川(水)→速玉大社(木)→那智大社(火)→熊野古道(土)。そして再び本宮大社に戻って……とね。…(中略)…」
…(中略)…
「中には、那智大社から速玉大社、そして本宮大社へとまわった人もいたとおっしゃっていましたよね……」
…(中略)…
「言っただろう。木は火を生じ、火は土を生ずる。そして土は金を――素戔嗚尊を生ずるんだ。時計回りにきちんと参拝することによって、五行を巡り、新たに太白が、熊野坐神が、素戔嗚尊が誕生する(傍点)んだよ」
「あっ」
「だから、それを防ぐべき立場にいる人間は、逆にまわったんだろう。流れを堰き止めるためにね。…(中略)…」
…(中略)…
 思わず横顔をじっと見つめてしまった私の視線の先で、桑原さんは、くしゃっとアルミ缶を潰した。そしてポツリと言う。
「これで――証明終わり
さてお次は「神器封殺」だ。

(高田崇史 「QED~ventus~熊野の残照」 2005年 講談社)

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