他の子供達はどうして幽霊にならなかったんだろう:道尾秀介「背の眼」

他の子供達はどうして幽霊にならなかったんだろう 

Amazon.co.jpを徘徊している時に、たまたま道尾秀介氏の作品に行きあたり、面白そうだったので、まずデビュー作の「背の眼」を読んでみた。

ホラーサスペンス賞の特別賞受賞作とあって、ホラー小説であるけれども、推理小説のようでもあった。前半はホラー色が強いけれど、後半は推理小説色が濃い。

ホラー作家である道尾秀介は、福島県の山奥を位置する白峠村へやってくる。
そこでは何人かの少年が神隠しにあっているということを聞く。そのうち一人の少年・糠沢耕一君に関しては、頭部だけが川から発見されているらしい。

道尾が件の川へ赴いてみると、変な声が聞こえる。それに恐れおののいた道尾は慌てて東京へ帰る。
そして、学生時代の友達で「真備霊現象探求所」を営む真備庄介を訪ねる。実は真備の元にも、この近辺で写真を撮った際に写った心霊写真が何枚か寄せられていたので、興味を持った真備は、助手である北見凛と道尾を連れて白峠へ赴く。

その心霊写真というのは、背中に一対の眼が写っていて、背中の持ち主はその後自殺をしているという。真備が調べたところ、その眼は頭部だけ見つかった耕一君の眼のようだ。
この「眼」というのが曲者で、本当に怖かった! 真備が;

そもそも人間は、他の動物に比べて嗅覚があまり発達していないから、敵や味方、あるいは自分の家族を、『顔』によって識別する。そして相手の性格や心理状態を、『眼』によって判断しようとするんだ。つまり人間の脳味噌は、『顔』あるいは『眼』というものに対して、極めて敏感に反応する性質を備えてしまっているんだよ。

p84

と言うが私に関して言えば、敏感に反応するがあまりか、“眼”に対して特別に恐怖心を持っている気がする。

何せ子供の時から、夜寝る時、扉の隙間から眼がのぞいているような気がして、怖くてならなかったのだから。
しかも今回も、暗闇の中、スタンドの光だけで読んでいたら、もう怖いこと! 私の部屋のスライド式のドアが、完全に閉まらないのだが、その隙間から眼がのぞいているような気がして、本当に怖かった!!
おかげで寝不足になってしまったが、次の日に続きを読んだら、その“神隠し”と呼ばれていた子供達の失踪事件は、天狗や幽霊の仕業でもなんでもなく、殺人事件の犯人としてちゃんとした(?)人間の犯人がいたので、全然怖くなかった。やれやれ

ホラーサスペンス対象の審査員である綾辻行人が言及している通り、“幽霊(妖怪)の仕業だと思っていたら、実は人間の仕業だった”という図式は、確かに京極夏彦の京極堂シリーズに似ている。
違うところは、京極堂シリーズは妖怪話が中心であることに対して、こちらは幽霊が出てくるし、霊現象は存在する結末となっている。

また探偵役の真備の容姿が端正であったり、助手の凛が美少女であったり、ついでに犯人が誰かすぐ分かったりと、お約束な部分が多々あったけれども、総合してとても面白かった!

<道尾秀介 「背の眼」 2005年 幻冬舎>

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