魔女(でも禿っぽい)に扮したルネ先生がとても可愛かったです:内藤ルネ 「内藤ルネ自伝 すべてを失くして」


何かの折に中原淳一について調べている時に、内藤ルネの名前にヒットした。
ちょっと気になていた時に、渋谷だか原宿だかで内藤ルネの店を見つけた。もう閉店していたが、外から見るとかわいいし。

今度は内藤ルネについて調べてみると自伝を発見したので借りてみた。

感想はというと、「違う世界に住む人だなぁ」ということだった。
あんなに成功したのに、“自分の絵は下手だ”と言っているので、自分に自信がない人なのかなぁと思いきや、自分が愛されていることに疑いがない。

中原淳一に感銘を受け、何通も何通も絵付で手紙を送り続けた結果、東京から呼ばれる。
上京して下積み生活を送ってから、「ジュニアそれいゆ」で活躍する。

そのあとも他雑誌用に付録などに絵を提供したり、デザイン・アイディアを提供し続ける。ギャラはとてつもなく少ないし、アイディアもどんどん盗まれていく。

でも内藤ルネのすごいところは、それに憤りを感じることなく、どんどん描きこなしていくのだ。
その心意気自体も、凡人では考えられない。例えば、パクられたことについても;

 ファンの方が長い間、大事に持っていてくださったのがニセモノだったりすると、さびしいです。せっかく手放さずにいてくださったのにね。
 お地蔵さんを作ったときも、みるみるうちに六社くらいにアイデアを持っていかれて。それがね、どれもよくできていたんです。
 これは、自分の作品もがんばっていいものに変えていかないといけないと思いました。ありがたい、という気持ちすらありました。私のものがこんなに真似されるなんて、やっぱりお地蔵さんってすごいんだ!とね。
 それにね、コピーされてどうのなんて、へたっている暇はないんです。まだまだ、思いがけないことがあといくつできるか。そう考える方が先……。私の世界にはいつも、まだまだ「続き」があるからなんです。

p129-130

と語っている。
時代の先端を駆ける人って、こういう思考回路になっているのか!と驚かされた。
パートナーとなる相手も見つけ(といっても、ずっと恋人の関係ではないが)、順風満帆かと思いきや、こんな俗世間から隔離された世界に生きているようなのに、それとも“だからこそ”なのか、バブルの崩壊に巻き込まれる。

「美術館を建てる」という詐欺に出会い、何もかも失ってしまうのだ。

蓄えも、仕事も。

そうこうしている内に、内藤ルネもパートナーも倒れてしまう。
内藤ルネの方は深刻で、退院後はパートナーとその恋人と東京を離れ修善寺に引っ越すのだった。
内藤ルネ氏はまだご存命なので、ここでthe endという訳ではないのだが、この自伝のきっかけというのは「内藤ルネ展」があったからみたいのなのだ。

ミーハーに聞こえるだろうが(ま そういう気持ちも大いにあるが)、行ってみたかった~
内藤ルネの描く絵はかわいいが、それと同じくらい彼がかわいいよ! と小娘に言われるのもなんだろうけど。

“かわいらしさ”とか“美”を真摯に追い求める人は、やっぱりかわいくなるのだろうか?

<内藤ルネ 「内藤ルネ自伝 すべてを失くして」 2005年 小学館>

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